【考察】車の加速比較について

最近、車種間の最大加速時の速度変化を比較するような記事をいくつか書きました。

で、これも前に書きましたが、現在は車比較サイトの構築を進めています。さまざまな機能を盛り込む予定ですが、最初の目玉機能として0-400mタイムや0-100km/h加速タイムを比較できるようなものを作成しています。これが有効に使えるためには実車をなるべく正確に表現できる物理モデルを構築し、それによってシミュレーションを行う必要があります。

現在の物理モデルは物理モデルと呼ぶのもおこがましいほどに粗末なもので、まだまだ改良の余地があると思っています。具体的には以下のようなことをモデル上で表現したいと思っています。

THS-2のシミュレーション

一番やりたいけど、どうしたらよいのか分からないのがこれです。THS-2(トヨタハイブリッドシステム、プリウスなどに搭載されるシステム)はエンジンからの出力が遊星ギアによって発電機と出力軸に分割されます。最大加速時には発電機軸がロックして出力時に直結、という仕組みなら計算しやすかったのですがそういう機構は備わっていません。というか、変速機の効果も兼ねているのでそういうことは出来ないはずです(たぶん)。したがって、全負荷領域でエンジンの出力が100%出力軸に伝わることはありません。

最大加速時には発電機に接続するバッテリの充電負荷を最大にしていると思いますが、この時にエンジンからの出力の何割が出力軸に向かうのかが分かりません。「システム出力136ps相当」という数字をよく見ますが、ここから充電負荷を推定できないか…と思うのですが。

もしくは、世界的に売れている車ですから、誰かが似たようなこと(加速変化の理論値)をすでにやっているかもしませんね。いずれにせよ、充電電流をどれくらい流すかというのはECUによって高度に制御されているのでそれを完全にシミュレーションできるわけがありません。どこかで妥協することになるでしょう。

トルコンのトルク増幅効果

最近はあまり使われなくなってきたと思いきや、意外に使われているトルクコンバータですが、こいつには名前の通りトルク増幅効果があります。これはトルコンの入力軸と出力軸の回転数の差が大きいほど増幅効果も大きくなり、入力軸と出力軸の回転数が一致した段階でトルク増幅効果が無くなります。なので、変速直後はこのトルク増幅効果を加味しなくてはなりません。トルクが何倍に増幅されるのか、回転数に応じてどのように増幅効果が小さくなるのか、というのがスペック表から分かるのかどうかすら今の段階では良くわからないのですが、先のTHS-2のモデル化に比べたらまだ実装しやすいと考えています。

CVTの効率

CVTの効率は走行状態によって大きく変わります。定常状態(一定速度走行状態)で最良となり、この場合80%後半~90%前半程度の伝達効率であるという説明がネット上では多いですが、低速からの加速時など連続的に変速比が変化する場合の伝達効率についてはあまり解説が見当たりません。

Wikipediaを見るとこの間のCVT効率は60%程度まで悪化するとあります。ただ、私が計算した感じだと加速中のすべての領域で60%として計算すると実際の速度よりも大幅に遅いので最悪値が60%になることもある、という程度であろうと考えています。もしくは、Wikipediaの記述が誤りであるか、です。あくまでも私が数車種で検討した結果ですが、加速中でも平均して80%程度の効率はあるのではないかという気がします。

ただ、これを突き詰めて考えるのは難しいでしょう。各車種に搭載されるCVT変速機の伝達効率はそれぞれの仕様から求める必要がありますが、これを数多の車種でやるのは現実的ではありません。伝達効率を推定するモデルがあればいいのですが、なければ経験的に値を決めるしかなさそうですね。

実車速度計の誤差

これは非常に困った問題です。GPS速度計と自動車の速度計を比較してみると、まず間違いなく自動車の速度計の方が高速な値を表示します。実際、自動車の速度計は実際の速度よりも速めに表示しています。たとえば、私の所有しているプリウスだと自動車の速度計が100km/hを指している時のGPS速度計の速度は90~95km/h程度だったと記憶しています。計測器には誤差がつきものですし、ましてや自動車の速度計など校正の機会は早々無いですから安全側に傾倒させているのでしょう。

保安基準的にも実際の速度よりも速めに傾倒させることを許容しています。具体的には道路運送車両の保安基準の細目を定める告示〈第二節〉第 148 条に以下の記述があります。

速度計の指度は、平坦な舗装路面での走行時において、著しい誤差のないものであ
ること。この場合において、次に掲げるものは、この基準に適合しないものとする。

(中略)

平成 19 年1月1日以降に製作された自動車にあっては、イの規定にかかわらず、
自動車の速度計が 40km/h(最高速度が 40km/h 未満の自動車にあっては、その最高
速度)を指示した時の運転者の合図によって速度計試験機を用いて計測した速度が
次に掲げる基準に適合しないもの。

(1) 二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車並びにカタピラ及びそりを有す
る軽自動車以外の自動車にあっては、計測した速度が次式に適合するものである
こと。

10(V1 -6)/ 11 ≦ V2 ≦(100 / 94)V1

道路運送車両の保安基準の細目を定める告示【2007.03.28】〈第二節〉第 148 条(速度計等)2/2
この場合において、
V1 は、自動車に備える速度計の指示速度(単位 km/h)
V2 は、速度計試験機を用いて計測した速度(単位 km/h)

たとえば自動車のメーターが100km/hを指していた時、実際の速度は約85km/h~106km/hでないといけません。実際の速度よりも遅く表示する方向より、速く表示する方向に対してかなり大きな許容誤差を認めているということですね。なので、メーカーも安全側(安全運転、車検適合側)に傾倒させた設定にしているということです。

しかしながら今回のように速度変化をシミュレーションするという場合などはこれはかなり困ります。各定数をいじってコンマ数%の変化を微調整しているのに、実車の速度計誤差が1割超もあるのでは困ります。殆どのドライバーにとっては速度計誤差などどうでもよく、メーターに表示された速度がすべてです。

0-400mのタイムは速度計の誤差とは何ら関係しませんが、0-100km/hの加速タイムを調べたらこういうところが1割弱も効いてきます。ここを補正するかどうかは人によって考え方は異なるでしょう。個人的には厳密な計測結果を要求しているわけではないので+5%くらい色を付けて表示してしまっても良いのでは、と思っています。

比較サイトの公開時期

最近のWebサービスはだいたいそうですが、完全な機能を揃えてからリリースするのではなくて完成したところから順次リリースしたいと思います。スペック表と速度変化を表示するところはすでに完成しているのですぐにでも公開できるのですが、諸事情により待ちが発生しています。初回リリースは2月中旬ころを予定しています。完成したらSNSで広めまくってください。よろしく。