マツダの中国販売が目標未達か~ブランドとは何か

ロイターより。

3代目「マツダ6」:中国で販売不振、14年目標達成に“赤信号”

以下、引用。

3代目「マツダ6」の販売が伸び悩んでいる。月間の平均販売台数は4000台の水準に低迷。し烈な競争が繰り広げられている中国ミドルセダン市場で、精彩を欠く状況という。(中略)

3代目「マツダ6」の累計販売台数は、足元でようやく2万台を超えた程度。今年の販売目標である3万7000台の達成は、絶望視されている。
その要因として指摘されているのが、高すぎる価格設定。価格は17万9800人民元(約355万円)からとなっており、当初の市場予想を上回っていたという。この背景にあるのは、3代目モデルの発売前に、現在も併売する初代モデルが値下げされたこと。ミドルセダン市場におけるマツダ車に対して、「手頃感」という消費者独自のイメージが植え込まれてしまったという。

ドケチの味方だったマツダ

私は、マツダとはドケチの味方だったように思います。何の車種にしても競合他社のそれよりもずいぶんと安い価格設定でした。しかも、その値段ほどに安っぽさは感じられない。むしろ足回りや運動性のそれは上回る車種もあるくらいで、そういうところが私は好きでした。

私は何かの商品を買うとき、そのカテゴリにおける「牛丼」を探します。外食産業における牛丼とは、「はやい、安い、うまい」を兼ねそろえたそれなりに完成度の高い分野だと思います。さらに、棲み分けもうまくできているように思います。牛丼よりうまいもの、やすいもの、早いものををそれぞれ提供する店はごまんとあります。旨いものを食いたい人/シーンでは人は高級店に行くでしょう。早く飯を済ませたい人はコンビニでパンとおにぎりを買って済ますでしょう。しかし牛丼の「はやい、やすい、うまい」のバランス感とレベルに匹敵するお店は中々無いと思うのですがいかがでしょうか。

PCの牛丼は長らくBTOだったように思います。BTOで希望のスペックを注文するのがもっとも無駄が少なく、拡張性に富み、また、最低限のサポートも受けられる良い選択肢でした。最近は台湾メーカーが完成品PCでも名をはせるようになり、国内メーカーも不当に高い商品を売らなくなってきたので構造が変わっていますが。

そして同様に車界における牛丼はマツダ車でした。マツダ車は元来より競合他社と比較して安めの価格設定の上、さらにはマツダの鬼値引きと呼ばれる怒涛の値引き攻勢を行いました。それでいて、先に述べたように競合他社に比べて不当に劣るものではない。安物ではないが安い。と、いうわけで牛丼勝負では他社の追従を許さなかったと思います。

正価販売とブランド力の向上

しかしながらこれはメーカーや特に販売店がしんどい方法ではあります。だから最近になってマツダの偉い人たちが「正価販売」によってブランドイメージを一新させるという旨の発言を頻繁に行っています。曰く、こういう事です。

マツダは昔から販売台数を増やすため、教習車やレンタカーに向けて安めの設定で卸してきた。その結果、安っぽいイメージがつき、中古車の買い取り価格は低かった。買い取り価格が低いので、マツダ車は他社ディーラーでは買いたたかれるのでマツダユーザーはまたマツダ販売店でマツダ車を売り、マツダ車に乗り換えるしかなかった。マツダスパイラルの誕生である(現在は買い取り価格が安いということは無い)。と、こういう、不名誉な歴史を持っている。根本的な原因は正しい値段設定で売らなかったことにある。正しい値段設定で売ればこういうつらくてみじめな思いをしなくてよいのだ。そうだそうだ。と、ざっくり言うとこういう感じ。

これはごもっともな論であるとは思うが、消費者にとってみればつまり「高値で売りますよ」というメッセージに他ならない。ただ高くなるのでは消費者は納得しないだろう。だから高くなったと同時にさらなる価値を提供する必要がある。そうして値段は高くなったけどもっと良い車になったよ。みんな買ってね~。と訴える必要があるが、それで、うんうん、買う買う~。という人もいれば、は?なに調子乗ってんの?高いなら要らねーよ。と言う人も居るだろう。その差し引きの結果、最終的な売り上げと利益は現在よりもプラスになる、という算段であるからマツダはそのように方針を転換した。

それが実際に経営指標にどう表れてくるかはもうしばらく様子を見ないと分からないだろう。しかし、少なくとも中国ではそれが失敗したのかもしれない。中国では355万円の価格設定は高すぎたという。

ブランドの付加価値があるかどうかは消費者が決めること

実際、私もマツダの各現行車種は少し高いと思う。CX-5やアテンザのディーゼルモデルを買うとなると平気で300万円のオーダーを突破してくる。私はディーゼルにそこまでの価値は見いだせないので私にとっては明らかに高い。300万を超えるともっと他にも良い車があると思ってしまうのだ。「他にも良い車がある」と思うという事は少なくとも私の中においては、値段相応のブランド力が無いということである。

「マツダは正価販売その他によってブランドイメージを一新させる」、それは分かったが、果たして執行部がメディアに向けて大々的に言うことだろうか?マツダに限らず、こういう旨の発言をする企業(の役員)がたまにいるが、私はちょっとこの感覚が理解できない。

ある商品にブランド力があるかどうかはユーザーが決めることであってメーカーが決めることではない。メーカーはブランドイメージを構築するために十分な価値をもつ商品を市場に提供したり、販売店舗を綺麗にしたり、営業の接客対応レベルを向上させたりといったような間接的なことでしか関わることしかできない。だったら素直に「良い商品を作る」「CSを向上させる」と言った方がよっぽど印象が良い。

トヨタやBMW、またはGoogleやApple、Microsoftがその歴史の中で「わが社はブランドイメージを一新させる」とか「ブランドイメージ向上に注力する」とか、偉い人が発言したことがあるだろうか?そのすべての発言をチェックすることは出来ないのではっきり言えないが、少なくとも私はそういう発言をしているシーンを見たことが無い。

で、話をマツダに戻して今のマツダの価値とは何だっただろうか。私が感じていたマツダの価値は先に述べたように車界の「牛丼」であることだった。今はどうだろう。少なくとも牛丼ではない。牛丼にしては高すぎる。確かに高い分旨そうには見えるが、この値段だったら、スーパーでもうちょっと高い肉買って食った方がうまいな。子供いるんだったら回転ずし行った方がよさそうだな。という、なんとも微妙なポジションになってしまったように思う。

先生の次回作にご期待ください

私はマツダの最新バージョンのプレマシー牛丼が食べたくて長らく新作情報を待ち望んでいたのだが、その私の期待とは裏腹にマツダは突如「高級路線で行くわ」と宣言、そいで出てきた車種も、まあ、良く見えるけれども私にはそこまでの価値があるとも思えず、これだったら別にわざわざ食いに行くほどでもないなーという結論になった。

今私が乗っているプリウスは、長きにわたって乗ることになると思う。買い替えても良いと思える車があればその時に買い替えたいと思うが、少なくとも今のマツダのラインナップの中には買い替えたいとまで思える車は無い。これまでマツダがダメ、という論調できたが、じゃあ翻って他のメーカーで欲しい車があるかどうかと言われれば、それも無い。学生の時はあんなに乗りたい車が山ほどあったのに、今の車にはあまり魅力を感じない。なぜだろうか。うまく説明できない。このままいくと、結局金を貯めて外車に乗るのかなーという気になってきました。