ロッキードの核融合炉詳細

前の記事「10年以内に核融合炉実用化」からの続きです。

ロッキード・マーチンは「ブレークスルーがあった」ので10年以内に核融合炉実用化可能と言っていました。ではどんなブレークスルーなのか。下記ページに概略が書いてあったので簡単にまとめてみたいと思います。記事中では核融合はメルトダウンの心配が無いだとか一般的なことも多数書いているので、そういう部分はバッサリ削ってブレークスルーの部分にフォーカスします。

Skunk Works Reveals Compact Fusion Reactor Details

また、不足と思われる説明を足したりしているので、原文とはあんまり一致していません。

大ざっぱな訳

核融合炉の基礎を知るとスカンクワークス(ロッキード・マーチン内部の開発チーム)のブレークスルーの詳細を良く理解できるだろう。核融合炉の燃料は水素の同位体である重水素と三重水素である。これに熱を加えると(普通は電磁波で加熱)、原子はイオンと電子に分解され、プラズマを形成する。

超高温のプラズマは炉の中でコイルによって作られる強力な磁場の力で閉じ込める。十分な力で閉じ込めていれば、プラズマの中で激しく動き回っているイオンは相互の反発力よりも大きい力で衝突し、融合する。融合したイオンがヘリウム-4になる過程で放出された中性子が炉壁に衝突するときに失われた運動量が熱となる。この熱を使ってタービンを回し、発電する。

現在までに最も有力な核融合炉はトカマク炉と呼ばれるもので、これは旧ソ連の物理学者によって1950年代に提唱された。トカマクはトーラス状(ドーナツのような形)の磁場を用いて同じくトーラス上のプラズマを捕獲するような形式になっている。トカマクでは反応を維持させるため、ドーナツの中心部分を通るラインにセンターソレノイドコイル(CSコイル)と呼ばれるプラズマ電流を誘導するコイルを設置する。この方式の課題は、核融合によって得られたエネルギーが反応を維持するために消費するエネルギーとほとんど同じになってしまうことにある。

プラズマから放出された中性子は炉壁を温め、最終的にタービンに伝わる。国際研究炉であるITERは、500MW規模になると予測されている。しかしながら、少なくとも2040年代あたりまでは実用化されそうにない。

トカマクの問題点はベータ限界と呼ばれる領域までしかプラズマを保持できない点にある。プラズマの圧力とそれを閉じ込める磁場の圧力の比がベータ値である。ベータ限界はそれを超えるとプラズマが消失したり、閉じ込めが破られて反応が継続されなくなったりする限界値である。トカマクでのベータ限界は5%程度である。これを超えると核融合反応は維持できなくなる。これを自転車のタイヤに例えるならば、空気を入れすぎてバーストするようなもの。それを防ぐために安全余裕を見積もって、低い圧力で運転させなければならない。これは非効率的なので、トカマク炉は非常に大きく、建設コストのかさむものになってしまう。

ロッキードのコンパクト核融合炉(以下、CFR)は根本的に異なる方法でプラズマ閉じ込めを行う事でこれらの問題を回避している。CFRでは代わりに直列の超電導コイルによって新たな磁場のジオメトリを形成する。この結果、プラズマは炉の中全体の広い範囲で保持される。超電導コイルは炉のチャンバー外側境界に磁場を形成する。これは自転車のタイヤによって保持されるのではなく、もっと強力な外壁によってプラズマを支えるようなものである。プラズマが外側に向かうほど磁場が強くなって押し戻されるという、自己調節的になフィードバック機構をも持つこととなる。CFRのベータ限界は1になると期待され、さらに、それを超えることも可能なはずだと考えられている。

決定的な違いは同じサイズの炉でCFRはトカマクの10倍ものエネルギーを発生させることが出来ることにある。逆に言えば、同じ出力であればCFRはトカマクの10倍小さいという事である。これは、生産性とコストに対して決定的に作用してくる。それも、核融合研究の潮流を変化させるほどに。物理学的な側面においても、この10倍というキーポイントは作用している。超電導コイルとそれから生み出される磁場の形状は本質的な安定を生み出すのでいつの時点でもうまく反応は継続する。たとえばもっと小さいプラズマで反応を継続することもできるだろう。(ここら辺訳が不安。よくスケールするという事を言いたいのだと思う)

image from Lockheed Martin

所感

ベータ限界がどのあたりになるかというのは実験的にしか分からない筈だと思うのですが、なぜ1を超えることも可能とか言い切れるのでしょうか。このタイプだと何かの算出条件が簡略化されて解析的に評価可能だとかそういう事なんでしょうか。もしくは私の知識が間違っている?フィードバックがどうたら、というくだりも、そのメリットはトカマクでも同じなのではないかと思うのですが、違うのでしょうか。

あと、直列コイルを使うとありますが、この形だと端からプラズマが抜けて行ってしまうのではないかと思うのですが、どうなってるんでしょうか。すみません、大学の時の電磁気学の単位を落としたことのある私にだれか説明してください。

商用核融合炉はずいぶん昔から、そして現在でも夢の技術なので本当に実現できるのかという思いはやっぱりあります。しかし、もしこれで本当に商用核融合炉が実現できたら面白いですね。国際的な研究機関とその道を代表する研究者が集まってもできなかったことを一企業が実現できてしまうのですから。まあ、こう言ったら怒られるかもしれませんが、研究者は研究費をもらわなければ食っていけないので順調に研究が進みすぎても困る…とかあるのかもしれません。それはさすがに暴論か。