10年以内に核融合炉実用化

ロイターから。

米ロッキード、10年以内に小型核融合炉実用化へ

再生可能エネルギーの新規契約停止という話題が出てきたこのタイミングでの核融合炉実用化ですから、なんとまあ、タイミングが良いというか。今まで電力に興味がなかった人たちが電力について考えている最中にこういうニュースが出てきたのは個人的には歓迎すべきことかな、と思っています。

核融合炉というとSF的な技術で、SimCityでも究極の発電所としてなじみが深い(?)と思います。

核融合とは2つの原子を融合させて別の原子が作られる現象で、太陽の中で起こっている反応がそれです。核融合炉はそれを人為的に起こすための炉で、「人工的に作られた太陽」などと言われます。これを将来的には発電に応用したいと考えているわけですね。

原子炉と核融合炉を比較した時の核融合炉がもつ長所というのはいくつかあります。まず、燃料である重水素は海水に重水の形で多量に含まれているので枯渇の心配がありません。また、継続的に放射性廃棄物が出るようなこともありません(全く出ないわけではない)し、反応を維持するのにも多量の電力を必要とするため、地震などの非常時にはすぐに反応を停めることができます。原子炉のように止めたくても止まらないという危険性がありません。

ただ、現実の核融合炉はまだ実験炉の段階で、商用発電炉の実現までは数々の障壁を突破しないといけません。私の大学院時代の研究室にいた先生が昔核融合炉を研究されていた方でしたが、「核融合炉は解決しなければならない障壁が多すぎるので炉にはならない」と言っていたのを記憶しています。

核融合炉で最も有望なものはトカマク型というもので、これはドーナツ状の空間に磁力を使ってプラズマを閉じ込める方式です。国際熱核融合実験炉(ITER)がフランスにあり、日本にはJT-60というトカマク炉があります。現在、次世代型であるJT-60SAを建設中です。核融合に関しては日本の研究はトップレベルにあると言ってよいでしょう。それでも、また別の実験炉を建設して研究を重ねているような段階です。

私は専門ではないので詳しくは知らないのですが、最も大きな障壁は炉の隔壁にあるようです。核融合炉の隔壁は厳しい環境にさらされます。高温のプラズマを長期間閉じ込め、さらに高速中性子が放出されるのでそれを取り込んだ隔壁は放射化(非放射性物質が放射性物質になること)します。なので、耐久性があって放射化しにくい素材が求められているのですが、これは研究するのも特別な施設が必要なのでなかなか進んでいないようです。

そんな中、ロッキード・マーチンが「10年以内に実現」と具体的なことを言っているので正直私は驚きました。まだまだ実験炉を建設するような段階でいきなり実用化です。なぜロッキード・マーチンが炉を作るのかというと、まずは軍事用途として使用したいからでしょう。原子力潜水艦や原子力空母などに見られるように大型艦艇の動力機関として使いたいのだと思われます。

ちなみに、余談ですが核融合炉を開発しようとしているのはロッキード・マーチンの中の「スカンクワークス」というチームで、過去にはSR-71やU-2を生み出しました。

小型核融合炉実用化に挑むスカンク・ワークスとは?

今回、実用化の見通しが立ったのはブレイクスルーがあったため、と簡単な記載しかなく具体的にどうなったのかがよくわからないのですが、パテントも多数申請しているということですから、追って情報が出てくるものと思われます。

また何か情報があれば掲載したいと思います。