クリーンディーゼルは良いのか悪いのか

某所で「このサイト(当ブログ)はディーゼルに否定的」と書かれていました。別に否定的じゃないです。ここではクリーンディーゼルそのものについて少し書きたいと思います。

殆どの物事は良いところと悪いところの両方を備えています。良いところから悪いところを引いて、十分なプラスが残ればそれをやったり、選択したり、購入したりする動機になります。そうでなければ、選択肢から除外すればよいです。したがって、我々が何かを選択しなければならないとき、その良いところと悪いところをよく熟知していることが大切です。

ディーゼルエンジンのメリット

熱効率が高い

ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも熱効率が高いです。したがって、自動車に搭載した時にはより高い燃費性能を発揮することが期待できます。デミオで比較すると、13C(1.3Lガソリン)は24.6km/L、15 XD(1.5L ディーゼル)は26.4km/Lになっています。マニュアルの15XDは30km/Lに達します。

構造が簡単で頑丈

ディーゼルエンジンは空気を圧縮して高温にした状態で燃料を噴射し自己着火させる仕組みです。このためスパークプラグがありません。また、燃料の噴射量によって出力の調整を行うため、スロットルバルブも存在しません。このため構造が単純になります。また、空気をより高圧に圧縮させるため各部品を頑丈に作ってあります。このため、ディーゼルエンジンの故障率はガソリンエンジンに比べて低いと言われます。

うちの父親(建設業/農業)は「ディーゼルエンジンは水と軽油さえあれば動き続ける」と言っていたのを記憶しています。農機具や建設重機はほとんどディーゼルですね。また、うちの実家で乗っていたいすゞジェミニは23万km走ってエンジン故障ゼロで快調そのものでした。

バスやトラックでディーゼルが採用されるのは後述するように大型化が容易ということもありますが、信頼性が高いというのも理由の一つであるような気がします。

トルクが大きい

ディーゼル車に比べるとより大きいトルクを発生させること(そのような設計)ができます。これはディーゼルが過給器と相性が良く、両者を組み合わせて使うことが多いためです。ディーゼルエンジンの圧縮行程で圧縮するのはただの空気ですから、どれだけ空気を詰め込んで圧縮しても異常燃焼が発生しません。大量の空気を詰め込んでそれなりの燃料を吹いて燃やせば燃焼行程1回でより大きいトルクを発生させることができます。

対して、ガソリン車はエンジンがそれほど頑丈に作られていないため一回の燃焼工程で大きなエネルギーを発生させることが難しいです。よって、トルクを小さくして回転数でパワー(馬力)を稼ぐ設計をしているものがほとんどです。ストップ&ゴーが多いような街乗り運転では、低回転数から太いトルクを得られるディーゼル車の方が加速感を味わえるでしょう。

どの程度差があるかは、実際にトルクカーブ+パワーカーブを見てみないと何とも言えません。

また、後述するように、ディーゼル車は高回転させることが難しいので、回転数の代わりにトルクを稼ぐという設計思想なのだと思います。マツダのSKYACTIV-Dえんじんは高回転まで回ると言われますが、ガソリン車に比べればやっぱり回りません。

大型化が容易

ガソリンエンジンはシリンダ径を大きくすると燃焼を制御するのが難しくなってきます。点火プラグで着火してから徐々に周囲に向かってガソリンが燃えていくのが通常の燃焼状態ですが、シリンダ径が大きいと燃焼途中でシリンダ内圧力が上がって周辺部からも自己着火が始まってしまいます。すると燃焼速度が速すぎてエンジンを痛めてしまいます。

ディーゼルエンジンの圧縮行程で圧縮するのはただの空気ですから、どれだけ圧縮しても自己着火することはありません。燃料を噴射した瞬間に自己着火するので、燃料の噴射の仕方によって燃焼状態をある程度制御できるわけです。だから、大型エンジンはディーゼルが多いです。船舶用エンジンなどではシリンダの中に大人が入れるようなサイズのものもあります。もっと大きなディーゼルエンジンもあります。ガソリンエンジンで大型のエンジンを作ろうとすると、大きなシリンダを作ることが難しいので多気筒化するほうが楽です。良い例が第二次世界大戦中の航空機のような、星型にピストンを配置したような多気筒エンジンになります。

燃料が軽油である

現在、日本では軽油の方がガソリンよりも安いのでランニングコストの軽減が望めます。

ただ、軽油の方が安いというのは税制上そうなっているというだけです。原油からガソリンよりも軽油の方が大量に取れるとかそういう事ではないです。将来的にディーゼルエンジンの乗用車への搭載が進めば、そこに目を付けて軽油の税金を上げるということは有りうると思います。

また、一般車ではメリットになりにくいですが、軍用だと航空機燃料(JP-8)と燃料を統一できて兵站(ロジスティクス)上の利点になるそうです。灯油、航空機燃料、軽油は性質が似ています。航空機燃料の方は添加剤が入ってたりするくらいの差です。

ディーゼルエンジンのデメリット

基本的にほとんどのデメリットはメリットの裏返しです。

重い

頑丈なエンジンであるという事は重いエンジンであるという事です。高い圧縮比に耐えるだけの頑丈なエンジンにしなければならない上、さらに高トルクに耐えるだけの駆動機構を搭載しなければならないためさらに重量がかさみます。

クリーンディーゼルはまだコストが高い

クリーンディーゼルというのは言わばハイテクデバイスの塊です。レアメタルを使う排ガス触媒、高度な燃料噴射制御機構、可変ジオメトリ方式もしくは高圧&低圧の二種を採用したタービンなどがそれに当たります。このため、まだガソリン車に比べると30~40万のコスト増となるようです。

パワー(馬力)が無い・回らない

頑丈で重いエンジン(ピストン、クランク)なので、高い回転数まで回すことができません。なので、最大馬力が小さいです。ただ、低速回転領域におけるトルクは大きいので、ストップ&ゴーが多いようなユースケースではガソリン車よりもむしろ加速感を得られます。ここが、「ディーゼルは低速トルクが凄い」「街乗り最強」などと言われるゆえんです。

この性質がデメリットとして感じられるケースは私が考える限り二つあります。一つ目は(たとえば)サーキットを走らせた場合。ピークパワーで走らせることが可能な局面が多いケースではピークパワーがある方が当然優位です。しかしそのような使用状況はおそらく街中では無く、サーキット場でしかありえないでしょう。ただ、誤解を招きそうなのでもう少し詳しく説明すると、これは一般的な説明です。実際の車種を比較する場合は構成要素が多すぎるので実際に走らせてみないというのが答えになるでしょう。

二つ目のデメリットは爽快感です。市販のスポーツカーがガソリンエンジンを採用するケースが多いのは、高回転まで回して得られる加速感や排気音がリニアに変化している感じが「ドライバーが車を思いのままに操る」感覚を演出しやすくしているためでしょう。

うるさい

重くて頑丈なパーツを回すので、騒音もガソリン車に比べるとうるさいです。個人的には、音量よりもあの独特な「カラカラ」とした音が耳に触る感じがします。マツダのクリーンディーゼル車は従来のディーゼルよりも音が小さくなったと言われますが、街中で走っているのを見るとやっぱり気になります。トラックが走ってきたのかと思います。まあ、慣れれば気にならなくなるレベルなのかもしれませんが。

臭い

ディーゼル車は特有の変なにおいがします。これの主成分は酢酸だそうです。最近のクリーンディーゼル車では、酢酸も分解させるような仕組みが備わっているそうですが、それでも触媒が温まるまでの短い間にちょっとこの匂いがするという話を聞いたことがあります。

私は子供のころ、この匂いが大嫌いで車に乗るたびに車酔いに陥っていました。

総括してプラスかマイナスかは人それぞれ

ここまで色々書きました。最初に述べたように、これらを総括して結果がプラスかマイナスか、どの程度プラスなのかを導き出し、良い悪いを決定すればよいです。

しかしながら、個々人において価値観や車に求める性能・機能は違うと思いますので、上記をもってして一概にどちらが良い、とは言い難いです。あとは検討している人が自分で考えるべき問題でしょう。

クリーンディーゼルは普及するか」という記事で伝えたかったのは「ユーザーのほとんどは経済性を気にしている」「ディーゼルエンジンで経済性を確保するためには低コスト化が必要」「現段階ではイニシャルコストをランニングコスト分で回収することは不可能」の3点です。

したがって、もし、「とにかく車にかけるトータルコストを小さくしたい」という要望を持った人に対しては、ディーゼル車よりもガソリン車がおすすめです。一方で「街乗りでも感じられる太いトルク感が欲しい、多少のコスト増は許容できる」などという要望があるのであれば、ディーゼル車がおすすめでしょう。

ちなみに、私は上記のメリット・デメリットを自分の価値観によるウェイトを掛け合わせて差し引きした結果、ガソリン車よりも高い金を支払って買う程度の理由は無いと判断しました。私にとって「太いトルク」「熱効率が高い」ということはそれほど重視すべきポイントではなかったというのが一番大きな理由でしょうか。

二番目の理由として、直噴エンジンの存在があります。VWのTSIに代表されるように、最近のガソリンエンジン車では直噴エンジンを採用するものが多くなってきました。直噴エンジンでは圧縮後に燃料を噴射するためディーゼルエンジンほどではないにせよ圧縮比を高めることができます。たとえば、SKYACTIV-Gエンジンの圧縮比は14です。直噴エンジンによって圧縮比を向上させ、熱効率が改善できるのなら、クリーンディーゼルのように高価なデバイスを積むよりも良いのでは、と思ったのです。これは定量的な評価ではないので、本当は両者の熱効率と製造コストを比較してみたいとは思います。それが無ければこの理由は単なる私の印象で裏付けがありません。しかしメーカーは詳しい資料を開示してはくれないでしょうから、ある程度は印象や感想で決めるしかないのも事実です。

色々書きましたが、私はディーゼルエンジンそのものがダメで、今後未来永劫選択肢には上らないエンジンだとまでは思っていません。今後の情勢次第では私もディーゼル車を買うかもしれません。ただ、今は積極的に買いたいと思わないというだけです。