【解説】マツダ デミオにディーゼル搭載が確定!!

6月10日付のマツダ ニュースリリースで、正式に次期デミオへのSKYACTIV-D 1.5ディーゼルエンジンの搭載が発表されました。以下が公式ソースになります。

マツダ、新開発 小排気量クリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D 1.5」を新型「マツダ デミオ」に搭載

既に各種サイトで噂されているのでこの事自体に特に目新しさは無いのですが、いくつか気になる情報も掲載されています。

気になる情報

ターボの搭載

乗用車用ディーゼルエンジンへのターボ搭載は特に珍しいものではなく、もはや当たり前と言っても良い。ディーゼルエンジンにはそもそもスロットルバルブがないので、基本的に出力の調整というのは燃料噴射量の調整によって行う。それに付随して、ターボによって送り込む空気(酸素)の量を制御してあげることで、さらに制御範囲が広くなる。つまり、同一排気量でも高い出力が得られる。

昔はターボと言えば燃費が悪いイメージがあったが、それはノッキングを防ぐためにそうするほか無かったからだ。ノッキングを防ぐためにはシリンダ内の温度を下げる必要がある。

温度を下げるには、燃料を余計に吹いて気化熱で温度を奪うこと、低圧縮比にしてあまり圧縮させないことの二つの方法が中心となる。そして、この2つの方法こそが燃費悪化の主要因である。

ディーゼルは圧縮してから燃料を吹くため、どれだけ空気を圧縮しようと燃料の混じっていないただの空気は爆発しない。つまり、ノッキングが原理的に発生しない。したがって、余計な燃料を吹いたりすることが無いので、ターボと言っても特に燃費が悪いわけではない。

この発想はVW Golfなどの直噴ターボエンジンに似ている。というか、直噴ターボエンジンがディーゼル寄りの制御方法を取っていると言った方が正しい。

ちなみに、もう一つのターボの欠点として、ターボラグというものがある。排気タービンによって過給圧がかかるのはある程度エンジン出力が上がってからだ。過給圧が掛かるまではただのトルクの細いエンジンなので、この領域でパワー不足になってしまう。

しかし現代ではこれも解決策がすでに存在する。それが可変ジオメトリターボというもので、これはタービン手前に電気で稼働する羽を用意しておき、排気が低圧の領域では排気流を狭めて流速を大きくするようなものである。「はーっ」と口を大きく開けて息を吹きかけても風車は回らないが、ストローで「ふーっ」と息を吹きかけると風車が回る、というイメージだろうか。

image from 第116回 自動車の“ダウンサイジング”を支える“過給”のテクノロジー | TDK

こういった技術がすでに実用化され広まっているので、昔のようなターボの欠点というのは、現代ではかなりのところ改善されていると思ってよい。もちろん、次期デミオにも可変ジオメトリターボが採用されているとの記載がある。

低圧縮比

SKYACTIV-D 1.5Lエンジンは圧縮比14.8であるとのことであった。ディーゼルの圧縮比は普通18~22と言われるので、いかに低い値であるかが分かるだろう。低圧縮比にする一番の理由は、排ガス基準に適合させるためである。一般に、ディーゼルは低圧縮比にした方がNOxやPMの発生が少ないと言われている。NOxが少なければ高価な排ガス処理装置(触媒など)を使わなくていいので低コスト化できる。

ただし、低圧縮比に設定すると、今度は燃料が着火するための温度に達しないという問題が発生する。この対応策としても、ターボは使用されているのだと思われる。より多くの空気を送り込んだ方が、気圧が高くなる(よって、気温が高くなる)からである。

高圧&低圧EGRの採用

EGRとは、エンジンの排気の一部を吸気側に再循環させるものである。一般的には、ディーゼルエンジンにおけるEGRは吸入空気の酸素量を下げ、PM/NOxの排出を抑えるために用いられる。低圧と高圧を切り替えれるというのは、エンジン負荷に応じて最適な量の排気ガスを再循環させるために用意されたものだろう。

最近のエンジンは昔のエンジンと違い、ハイテクデバイスの塊である。低圧縮比、EGRの採用、ターボの採用などという言葉が躍っているが、どれもこれも採用したから良いとか悪いとかいうものではない。自動車評論家の一部は「直噴ターボが良い」だの、「ダウンサイジングターボを見習うべき」だの好き勝手言っているが、いずれも物事の本質を捉えているとは言い難い。これらはすべて制御の自由度を増やすための方法だったり、一つの設計思想であったりするので、それだけを持ってして良いとか悪いとか論ずることはできない。

これらの要素技術を用い、エンジン内部でどのように燃料を燃焼させるのか、という部分にエンジンの良し悪しの本質がある。

 

減速エネルギー回生システム

 

次期デミオでも減速エネルギー回生システムが搭載されるとの情報が記されている。ニュースリリースでは「i-ELOOP」と書いているので、アテンザなどに採用されているシステムから特に目立った進歩は無いのだろう。つまり、エネルギー回生システムは搭載されるが、それは動力として用いるのではなく、電気二重層キャパシタに蓄電して電装品に用いることでオルタネータの負荷を減らす、というシステムであると思われる。

i-ELOOPの採用が進むことは当ブログでも予想していた。将来的には、この技術が進化して電気を加速時に動力として用いるマイルドハイブリッドシステムになるだろう。プリウスなどに見られる普通のハイブリッドシステムは、蓄電池の(価格が)高い、重い、デカいというデメリットを背負っている。マイルドハイブリッドはより小規模なハイブリッドシステムを採用する中間策である。今後、多くの車に採用されていくだろう。

ただし、電池の進化の速度によっては、マイルドハイブリッドも過渡的な方策となるかもしれない。

マニュアルのラインナップ

走りを重視するマツダらしく、マニュアルがラインナップされると明記されている。これはなかなかすごい。

ただし、ラインナップの中には必ずガソリン車も存在するだろう。なぜならばディーゼルはまだガソリン車に比べれば高コストで、ランニングコストまで勘案してもイニシャルコスト差を回収しやすいとまでは言えない。マーケティング上、安いデミオは絶対に残しておかなくてはならない。

すると、ディーゼル/ガソリンに加えてそれぞれMTを用意するのだろうか?ディーゼルエンジンとガソリンエンジンとでは、トルクカーブがまるで異なるため、それぞれ別個にミッションを設計しなくてはならないだろう。ギア比の変更に加えて、ディーゼルでは高トルクに耐えるために特別な設計が必要かもしれない。

元々MTは売れ線ではないので、MTはディーゼルのみにラインナップされるのではないかと私は予想している。元々MTを選ぶユーザーは走りにこだわりのあるユーザーであるので、資金の制約が無い限りはディーゼルを選ぶだろう。

まとめ

使われている技術要素もすごいが、デミオのサイズで1.5Lディーゼルターボを選んだという事自体に恐れ入る。きっと次期デミオは良い車になるだろう。