思い出の車その1: いすゞ ジェミニ

なんとなく車の記事を書いてみたいと思い、車遍歴を書いてみたい。最初は いすゞ のジェミニだ。

image from wikipedia

たぶん20代前半、もしかしたら20代後半まで含む人は信じられないだろうが、いすゞもその昔乗用車を作っていた。というかむしろ車に興味のない人の中には「いすゞって何?」という人もいるかもしれない。

いすゞは戦前からディーゼルエンジンを作ってきた歴史のあるメーカーである。一時期経営状態が悪かった時もあるが、2010年にトラック販売台数では日野自動車を抜き1位になっている。元をたどるとIHIから分社した会社で、さらにいすゞから日野自動車が分社している。現在はどちらもトヨタが株主になっていて、連携強化が図られていくことだろう。

いすゞの乗用車はジェミニやビッグホーンなどが有名だ。ビッグホーンは外観が特徴的なので、名前は知らなくとも画像を見れば、「ああ、あれか」と思いだす人も多いのではないだろうか。

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うちの実家では、私が小学2年生くらいのときにジェミニに買い替えた。それまでは多分、カローラだったと思うが円形でホタテの貝殻みたいな大きいエアクリーナーがエンジンの上に置かれたキャブレター車に乗っていた。冬になるとエンジンが中々かからず、母親はチョークを引っ張ったりして試行錯誤していた。「昔の車は手回しでエンジンが掛けられたから冬場は助かった」などと言っていた。ジェミニは冬場でもエンジンがかからないことは無かったと思う。

ディーゼルエンジンを作り続けてきたいすゞであるので、当然ジェミニもディーゼルエンジンが搭載されていた。1.7Lのターボであった。ディーゼルエンジンは強い、というのは父親が何度も言っていた。「水とオイルさえあればディーゼルは動き続ける」と言っていたとおり、このジェミニも23万キロを走破した。その間、エンジンは一度も故障することは無かった。マフラーが錆びて落ちてボディに穴が開いてもエンジンは元気だった。エンジンだけならまだまだ使えただろう。

前述のとおり、私が小学2年生くらいのときにジェミニに乗り換えたと記憶している。その時はこのディーゼルのにおいがとても苦手で、よく車酔いして吐いていた。シートを汚された母親がぶちぎれて、「もうお前は車に乗せない!!」みたいなことを何度か言われた。が、私も酔いたくて酔っているわけではないので困る。

その後、私が18歳になって免許を取ったときまでこのジェミニは実家においてあった。運転してみると、小さくて軽い車体にトルクのあるエンジンでとても良い。1速からアクセルを思い切りふかすと簡単にホイールスピンした。エンストもしにくいので、MT初心者にはありがたかった。

スペックを調べてみると、車両重量はおよそ1t。これに1.7Lのディーゼルターボが乗っているのだからパワフルなのは当たり前だ。ただ、バネが柔らかくてロールが激しいのと、振動がいつまでも続く(単にショックのオイルが抜けていただけかもしれない)記憶がある。

また、思い切りエンジンを回すと煙幕かと思うくらい排気ガスが放出されるのが記憶に強く残っている。この微粒子が環境に悪いと規制されて浄化装置の取り付けが義務付けられ、国内のディーゼル乗用車が徐々に姿を消していったのはご存じのとおりだろう。

あれからいろいろな車に乗ったが、私はやっぱりディーゼルが好きだ。頑丈なのもいいし、低速からトルクがあるのも運転しやすくていい。日本は軽油が安いのでランニングコストの面でもありがたい。

徐々に日本の排ガス規制をクリアしたクリーンディーゼル車が投入されているが、もっともっと流行ってほしいと思う。

そもそもディーゼルはガソリンエンジンよりも後発の技術であり、熱効率に優れている。しかしながらそれでもディーゼルエンジンの採用が進まないのは、排ガス規制のクリアが難しかったのと騒音や振動で不利な面があり、なかなか技術革新が進まなかったという背景がある。

エンジンで欧州超えへ結束 車8社、ディーゼル共同研究(日経新聞)、などというニュースも最近目にした。欧州はディーゼル乗用車のシェアが日本よりもずっと高く、技術的には先行している。昔から産学共同の研究プロジェクトを立ち上げて力を入れてきた。日本は今から始めるが、ちょっと遅きに失している感がある。

完全に結果論になってしまうが、当時からディーゼルの規制を厳しくするのとセットでディーゼルの研究開発をもっと国が主導して活性化させてもよかったと思う。ディーゼルが技術的には後発で優れていて、かつ、ディーゼル規制の目的はディーゼルからガソリンへの移行ではなくて汚い排気ガスを出す古いディーゼル車をリプレースするというものだったのだから、新しいディーゼルの開発を活性化させるべきという議論も当時あったはずだとは思う。

他にもディーゼルにとって厳しい現状が排ガス規制だ。昨今登場したクリーンディーゼルは排ガス規制を突破するために数多のハイテク機器と高価な金属を使う触媒を搭載して実現している。それがコストに大きく反映されてしまっている。ジェミニは当時130万程度の価格で、安くて速くて丈夫な良い車だったが、300万を超えるような価格でディーゼルが登場してもあまり魅力的ではない。

そういうことを考えると、やっぱり、ジェミニは90年代初頭でしか生きられなかった車だと思う。今後、日本でジェミニのような車が登場する機会はそう無いだろう。