フルスタックエンジニアとDevOps、当たり前すぎる概念の再定義

ソフトウェア業界はとにかく新しいキーワードが好きなのであって、次から次へと新しい言葉が生まれ、死んでいく。本当に不毛だと思う。バズワードの真意をわかっている人は「またか」と毎回冷ややかな目でそれを見送っていることだろう。

最近は「フルスタックエンジニア」とか「DevOps」とかいう単語をよく聞くが、これも単なるバズワードの一つだと私は認識している。求人情報を見るとアホの一つ覚えのように「フルスタックエンジニアとして活躍していただきます」「DevOpsエンジニアとして活躍して頂きます」などという言葉が躍っている。語尾で(キリッ)って効果音が聞こえてきそうだ。

「フルスタックエンジニア」はハードウェアやクラウドサービスの選定からフレームワークの選定、データベース設計、コーディング、UX、UI、サービス運用まで全部できるエンジニア、みたいな意味で使われている。「DevOps」も似たような感じで、developingとoperatingの両方にかかわるという意味だ。

つまり、「フルスタックエンジニアとして活躍していただきます」「DevOpsエンジニアとして活躍して頂きます」、というのは意訳すれば「何でも出来る奴カモン!!」っていうことを、短く、簡潔に、かっこよく表している以上の意味はない。

どんな業界でも特定の業務しかできない人よりはいろいろできたほうが何かと重宝がられるだろう。大型ダンプの運転だけじゃなくて、大特も持ってて玉掛け作業もできるよ、って人の方が会社的には助かるね、ってだけの事である。んなもん当たり前の話であって、いちいち、DevOpsだかオクトパスだかたこ焼き屋だかしらねーけど、新しいキーワードを当てはめてインテリぶってるのはバカじゃないだろうか。んなこと、いちいち言われんでもわかるっちゅうねん!!!って声を荒げて大人げなく主張するべきだとおもう。

私はずっとそういう考えでいた。だから、ソフトで飯を食っていこうと決めてから、生半可な気持ちでは通用せんと思い、半導体の仕組みからWebデザインまで全部理解してやろうと思って、大学に入って計算機科学やデータベース理論を勉強したうえ、Photoshop、Illustrator、DreamWeaverから始まって最終的にはBlenderで3Dレンダリングまで(半分趣味で)勉強し、こないだはプロジェクト管理を学ぶために2か月もインドに研修に行ったのに、なんだ、会社に入ってからはC言語しか使わず、こないだからようやくC#とかJavascriptとかに触らせてもらったくらいで、いつになったらサーバ選定とかクラウドサービス選定して、スケールアウトしなくて悩んだり、絵を描いたり出来るんだ!!!って感じですよ。

35歳定年説より怖いフルスタックエンジニアしか生残れない未来とは | paiza開発日誌

今後国内では、サービス開発のコア人材となるフルスタックエンジニアかスペシャリストのみが生き残り、それ以外は自動化されるか、単価の安いオフショアかに置き換わっていくと考えられます。(中略)

技術で食べていくためにすべき事は、「勉強し続ける」技術を身に着ける事これに尽きると思います。

という記事を見つけたんだが、これまったくその通り私は同意するのであって、つうか、むしろそうであるべき、そういう時代が早く来てほしいとすら思っている。

で、私が今の会社に入ってびっくりしたのは、私のような考えでいる人がほとんど居ないということであった。「ソフトをやる会社に入ったのに、みんなソフト好きじゃないんだな、と入社した時思った」と述べた私の先輩がいたが、私も同じことを思った。まあ、さすがに全員が絵を描くべきとはさすがに思ってないけど、せめてみんなソフトを作るのが好きであるとは思っていた。が、そうではなかった。大体、「俺は最近の技術は知らないんだよね」「俺はXXXは知ってるけどYYYは出来ないから俺の分野じゃないね」とかいう奴がほとんどだ。どうなってんだ。

ちなみに付け加えておくと、私はスペシャリストを否定する意図はない。たとえばデータサイエンティストにUIデザインしろというつもりはない。高度なシステムにはスペシャリストが必要であるのと同時に、システム全体を運用保守折衝まで含めて大まかに理解できるゼネラリストが必要であって、どっちも重要だよね。いちいち言われんでも当たり前の話だよね。で、一つの能力しか持って無いのに、それをスペシャリストの領域まで伸ばそうと努力もせず、ほかの分野でできることを増やそうともしないアホは将来的にはダメになっていくよね、ということを言いたいだけだ。

それもこれもどれもこれも当たり前の話であって、なーんで当たり前のことをいちいち繰り返してんだろ。

こういうのは本の世界でもよくあって、好例が「人は見た目が9割」という本だろう。人は人に対する印象の殆どを外観に頼っている、なんてのは当たり前の話で、だからみんな面接のときにはちゃんとしたなりで出向くし、アイドルは露出の多い服を着るし、三十路の女は厚化粧するのであろう。んなもん、実体験や周囲を観察してりゃあ自然に理解できることであって、なんでいちいち人にいわれ、さらに金を出してまでその情報を得ようとするのか全然理解できない。

と、いうわけで、世の中には当たり前の概念をさも新しいトレンドで、それに従わなければ出遅れる、みたいな風に巻くして立てる連中が多いのですけれども、だいたいそれをやって得をするのは言い出した連中だけなので「またか」と冷めた目で放っておくのが一番でございましょう。