どこに床暖房の室外機を置くべきか

どういうこと?

一条工務店のi-smart/cubeでは全館床暖房が標準でついてきます。全館床暖房はヒートポンプで不凍液を温めて循環させる仕組みです。ヒートポンプなので、室外機をどこかに設置する必要があります。この室外機をどこに設置するか?という話です。

好きなところに置けばいいんじゃないの?

基本的にはそうです。でも、置く場所によって電気代が変わってきます。電気代が大きく変わるなら、電気代がかからないところに置いたほうがいいんじゃないか?という趣旨です。

熱ポンプ(ヒートポンプ)はその名の通り、熱を輸送するポンプです。したがって、屋外から屋内に熱を輸送する場合は、室外機が温かい場所にあったほうが効率が良くなります。効率が良くなると電気代が安く済みます。

実際問題どのくらいの差があるの?

この計算ができませんでした。外気温の変化によってCOPがどう変わるかという情報が無ければ計算できません。ですが、こないだ長府のHPから仕様書を落とすと、なんと、普通に書いていたのでびっくりしました。こういうのはふつう公表しないもんだと思ってました。灯台下暗しです。

これが一条の床暖についてくる室外機(RAY)のヒートポンプの性能曲線ですな。曲線つうか直線ですな。型番はRAY-4037です。

図からわかる通り、外気温が下がると温水能力も下がります。なので、同じ室温を維持するため、より室外機が頑張らなくてはならなくなるということです。より頑張るということは、より電気を食うということです。

で、室外機を日向においた場合と日陰においた場合の2パターンを考えてみたいと思います。日陰と日向の温度差を調べると、下記ブログで「4.3℃」という記述がありました。

【科学コラム@vol.44】★日向と日陰の温度差調査★ | リケジョのさいえんすぶろぐ

なので、すげーおおざっぱな見積もりですが、ここでも室外機周囲の温度が、日向と日陰で4℃ちがっていたと仮定してみるととします。計算を単純化するために、冬場、日向が平均4℃、日陰が平均0℃であったとしましょう。すると、暖房能力はさっと見た感じ0℃の時5050Wで、4℃の時5450Wくらいです。と、いうことは、大さっぱに言って日陰に置くと日向に置いた時よりも8%割近く余計に電気を食うということです。

下記ブログを参照すると、定常状態(室内が十分暖まった状態)での床暖房システムの消費電力は1日大体35kWhであることが分かりました。

【性能検証】床暖房は付けっぱなしがお得? | 一条工務店i-smartで建てるスマートハウス!

これを平均と仮定し、日向に置いた場合は-4%、日陰に置いた場合は+4%の消費電力量となるとしましょう。ということで、冬の期間が12月~3月の4か月間120日であったとこれもざっくりと仮定すると、日向に置いた場合は120*35*0.96=3990kWh、日陰に置いた場合は120*35*1.04=4368kWhとなり、その差は378kWhとなります。で、電気代はこれもまたざっくり22円/kWhくらいと仮定すると、年間8316円の差となります。20年で16.6万円。マジか。自分で計算してびっくりだ。

むむむ・・・もっとちゃんと調べよう。特に5℃以上で暖房効率が跳ね上がるので条件によってはもっと悪くなる。

ここで考慮されていないのは、下記の要素だ。

5℃以上の場合
暖房能力は線形で変化していない。5℃以上ならばCOPは急速に改善する。したがって、日向で5℃のときが最悪値となる。

実際の気温
4か月間ずっと日向で4℃という条件で固定している。なので現実に即していない。気象庁から平年気温データを持ってきて、これを日向の気温として使うこととする。

消費電力量
1日35kWhというのは今年1月の値である。したがって、どちらかというと電気代がかかる時期の値である。我が家の場合11月は1月の6割くらいの電気代であった。この変動分のほとんどがヒートポンプ(エコキューと含む)で消費されたものと仮定し、これを利用して気温と消費電力の関係を調べた。その結果、床暖房の消費電力量は、気温tに対して-t+36[kWh]であるという、超おおざっぱな関係を導いたのでこれを使用する。

昼間と夜間
日向と日陰で温度差が生ずるのは昼間だけである。夜間は日向も日陰も無いので影響しない。また、昼間の電気代は高くなる。気象庁から日照時間データを取ってきて、さらに東京電力の電化上手プランに従い、昼間の電気代31.64円/kWhと定めた。

場所は東京都でもちょっと寒めな八王子として、八王子の気象データを使用した。

以上を考慮し、Excelを使って計算すると・・・。

年間(1シーズン)で約3620円となった。また、日陰で最大1.24倍の電気代がかかる場合があることもわかった。なーんだ。大したことないじゃん。真値が良くわからないので適当に決めた条件や値が多々あるが、その分の誤差を考慮してもたとえば数万というオーダーになるというのは考えにくい。実際、数千円のオーダーだろう。

しかも、この数千円がそのまま懐に入るかというとそういうわけでもない。というのは、夏場エアコンを使うことも考えなければならないからだ。一条工務店の床暖房に使っている室外機ユニットは、同時にRAYエアコンと呼ばれるでかいエアコンの室外機と兼用になっている。夏場、このエアコンを冷房に使うときは逆に日向においてあると効率が悪くなる。なので、3620円の浮いた電気代も相殺されてしまう。

つまり、ここまで調べておいてなんだが、一条工務店の床暖房室外機は、日向においても日陰においても、それぞれ効率が良い季節と悪い季節があるので、置き場所にこだわってもしょうがないということだ。

ではエコキュートはどうだろうか。エコキュートはよっぽどのことが無い限り、夜間にしか動作しない。すると、夜間はそもそも日陰も日向も無い(厳密に言えば昼間ため込んだ熱の放射分はあるかもしれないが微々たるものだろう)ので、置き場所はどこでも変わらないということになる。

考慮すべきがあるとすれば、標準でついてくるRAYでない、その他のエアコンだろう。一条工務店は全館床暖房なので追加の暖房設備はまず要らない。なので、エアコンを設置しても暖房運転はまずしない。ということは、日陰に設置したほうが良いということになる。

夏場、日向と日陰でどれくらいエアコンの電気代がかかるかはまた同じような計算をしなければならないが、まあ同じような数千円のオーダーとなりそうだ。

まとめ

RAY(床暖+エアコン)とエコキュートの室外機はどこにおいても大差ない。冷房用エアコンの室外機は日陰に置いたほうが良いが、1台につき年間数千円というオーダーとなる。

結論としては、室外機の置き場所にこだわるよりも、使い方などを気にしたほうが良いだろう。エアコン室外機用の日陰カバーはある程度効果が見込まれるので検討の余地はあるだろう。しかし、室外機を覆い隠した上にさらにファンの送風を妨げない程度のスペースが必要なことを考えると、そのような製品があり、かつ、浮いた電気代を回収できる程度の価格で売られているかどうかはちょっと疑問だ。