ミクの話

結構昔に同じ話を書いたことがあるのだけど、今日またその話を思い出したので書いてみる。

それは会議でのことであった。その会議では拡張現実(AR; Augmented Reality)を利用した斬新なソリューションを打ち立てることはできないか、というテーマであった。

発表者がパワポのスライドを写しているのを、ううむ、これは、か、何か言いつつ皆が真剣なまなざしでスライドを見つめ、発表者の説明に注意深く耳を傾けていた。んで、「では、実際の例を・・・」と次のスライドに移ると、そこにはこのように堅い雰囲気の会議にはちょっと場違いな雰囲気をまとった、なにかカラフルなもぞもぞと動く物体が出てきた。

それは初音ミクであった。机の上を映した実写映像に、CGで生成された初音ミクが合成されていて、あたかも机の上に初音ミクが存在しているかのように見える。これがARの実際の例である。

「これは・・・ミクですね・・・」

発表者がそうつぶやくように語った。その話し方はどこか優しく、郷愁に満ち溢れているようにも感じられた。皆は、ううむ、これが・・・ミクですか・・・といった面持ちでスライドを見つめていた。

机の上の初音ミクは何かの曲に合わせて踊り狂っているようであった。しかしスピーカーが接続されていないためか、もしくは、そもそもモーションデータだけで音声データがないのか、ただただ静かだった。静かに踊り狂う初音ミクを、40人くらいのオッサンが真面目くさった顔で見つめていた。

それから何秒だったであろうか。厳かである会議室が静寂に包まれている。そしてようやく、沈黙を打ち破る言葉が。

「では・・・次のスライドを・・・」

終わりかよ。今のはなんだったんだ。と、ここまで来てなんだか私はものすごく笑えてきた。なんで平日の真昼間からオッサン40人が踊り狂う初音ミクを見つめているのか。そして、このような会議の場で一心不乱に踊り狂う初音ミクはなんなんだ。もうちょっと空気を読んでもらいたいというのが本音である。しかしバーチャルアイドルなので現実には干渉しないのが良いところでもあり、また、弱点でもあるのか。この発表者のオッサンもちょっと変わっていて、普段からギャグなのか真面目なのかわからないことを連発するのであり、この初音ミクも、「初音ミクかよ!」という笑いを取りたいのか、それとも真面目なのか判断できない。

というかそもそも気になったのが、なんで「ミクですね」とか呼び捨てにしてるの。あなたたちそんなに親しかったの?親戚なの?いとこの娘がアイドルになってねー、昔うちにも遊びに来たんだよ。みたいなプチ自慢なの?

みたいなことを考えたら途端に笑えて来て、ひっしにこらえてたんだけど、いざ文章にしてみると大して面白くない。私はこういうことがよくある。