派遣社員に社員食堂を使わせないのは差別じゃない

こういう話がある。

楽天が派遣社員を社員食堂の利用で差別か?「無料の食堂を派遣は使うな。フードコートへ行け」ネットの暴露が話題に

内容を引用する。(原文は「教えて!goo」だがすでに削除済み)

社内公用語を英語にしたとある有名な大手IT企業に以前派遣をして勤務しました。

(中略)

ここでビックリするような事があり、最初の契約期間で終了させて頂きました。と言うのも、社員食堂が設けられているのですがそこは無料の食堂なので、正社員しか使用できないと言われ、それは納得が出来ました。

では、自分のデスクで食べていいのですか?と聞くと、社内では食べるところはありません。休憩室や会議室も使えませんと言われ、では非正規社員の方はどこで食べるのですか?と聞くと、近くのイオンの地下にフードコートがあるのでそこで食べて下さいと言われました。

私は金銭的に余裕がない事もあって時給の高い派遣を選んでいる事もあり、毎回フードコートで食べると予算的に…と相談すると、自分で作ってきたお弁当を持ってきてイオンの電子レンジで温めて皆食べてますよとの事…。

(中略)

大手企業だからという訳ではないですが、非正規社員は社内ではお昼食べさせないから他の企業のフードコートをこっそり借りて食べてね。とかそんな事生まれて初めてだったのですが、私が甘いだけだったのですか?どうしても我慢できずに最初の更新で辞めましたが、すごく今でも解せないというか、モヤモヤしてます。他の会社でもこういう事って普通に言われる物なのでしょうか…。

これに後追いする形で、

その雇用する労働者(社員)が通常利用している診療所、給食施設等の施設の利用に関する便宜を図るよう努めなければならない

という労働者派遣のガイドライン(厚生労働省)に反しているのではないか、という批判があるというのだ。

また、インターネット上の注目度も高く、多くの意見は楽天に対して批判的なものである。これに対して、私は以下の点がおかしいと感じる。

そもそも「とある有名な大手IT企業」が楽天かどうかわからない

「社内公用語を英語にした」「社員食堂が設けられているのですがそこは無料の食堂」という記述から、おおむね楽天であることに間違いはないと思われるが、楽天ではないかもしれない。いかなる人・団体も日本国内すべての会社の制度を知っているわけではないから、この会社が楽天であることを証明するのは不可能である。

楽天であるかどうかわからないのに楽天と決めつけ楽天を批判するのははっきりと名誉棄損である。私が楽天の経営者であれば片っ端から民事訴訟を起こすところだが、実際の楽天がそうしないのはむしろ大企業たる度量の深さであると思う。もしくは、単に騒いだ方がみっともないからだろう。

楽天は社員食堂を派遣社員にも提供している

前述の記事中にあるのだが、「楽天が新社屋「楽天タワー」お披露目、無料化した「楽天食堂」など」というInternet Watchの記事で

楽天タワーで働く人であれば、社員だけでなく派遣社員、アルバイト、警備員でも朝食および昼食は、ステーキや寿司など特別メニューを除いて全品無料となっている。

と書いているではないか。「Internet Watch」と「教えて!goo」の匿名の投稿を比較して、どちらがより信用できるであろうか。私は明らかに複数人によって校閲されるInternet Watchの記事のほうが信用できると思う。この事実を知ってもなお、教えて!gooの匿名の投稿を信ずるというのは、自分にとって信じたい都合の良い事実を選択的に信じているにすぎず、まったく不合理だと思う。「楽天は悪である」、という根拠のない前提が出来上がってしまっているのではないか。

ガイドラインと照らしても問題ない

仮に、某企業が楽天であったとして、かつ、Internet Watchの記事が間違っているか、もしくは、取材に応じた社員が本当は正規社員しか利用できないのに派遣社員も利用できると嘘をついていたとしよう。すると、厚生労働省が指し示す「派遣先が講ずべき措置に関する指針」に反するのではないだろうか。どうだろうか。私は別に反していないと思う。

もう一度指針を再掲する。

その雇用する労働者(社員)が通常利用している診療所、給食施設等の施設の利用に関する便宜を図るよう努めなければならない

よく読んでほしい。「努めなければならない」と書いている。「しなければならない」ではない。shouldであってmustでない。だから別に社員食堂を派遣社員に必ずしも提供しなくてもよい。

以上を「言葉尻だけとらえている」「屁理屈だ」と思うのであれば、読解力もなければあまりにも社会を知らないと言わざるを得ない。そもそも国家機関が発表する公的な文書で行間を読む必要性はない。「努めなければならない」のであれば、努めてみて、それでダメだったらやらなくていいのだ。

まず、企業が社員に対して無料のランチを提供するというのは、社員のモチベーションを高めたり、企業イメージを良くしたりして、結果的に企業活動を活発にさせるという狙いがある。決して慈善事業でやってるわけではない。

そして経営者が無料のランチを提供するのを派遣社員まで含めたらより効果的と判断すればそうなるだろう。しかし、派遣社員まで含める予算はない、もしくは、含めても効果が薄いと判断すれば正社員のみに限定するだろう。ちなみにこれは差別ではなく区別である。

また、厚生労働省が「社員が利用している各種施設は派遣労働者にも提供しなければならない」と言ったらどうであろうか。どんな企業でも予算は無限にあるわけではない。正社員に限れば提供できるサービスも、派遣従業員まで含めれば提供できないというケースもあるだろう。ここでもし、厚労省がmustと言っていたならば、取れるオプションは一つだけである。すなわち、正社員にも派遣従業員にもサービスを提供しない、ということになる。このように厚労省が会社の運営方針まで踏み込み、企業活動を束縛するというのは常識的に考えればやりすぎである。

労働者を保護するのか、企業活動を優先させるのかというのはトレードオフになる部分が少なからずあるので、もちろん、この線引きは難しいところがある。しかしそれを考慮しても、やはり上記のように、会社が持つ資産の使い方まで国が言及するというのは明らかに過干渉である。

個人と会社をごっちゃにしている

これは私の感想であるが、この話は「社員食堂を派遣社員に利用させない」というだけではここまで注目されなかったのではないだろうか。重要なのは、社員が「近くのイオンの地下にフードコートがあるので、そこで弁当をチンして食べて下さい」という旨を言ったということではないだろうか。

社員は高層階のカフェテリアで無料のランチ。快適な環境。しかし非正規社員、派遣社員はイオンの地下のフードコートで電子レンジを使って手製の弁当を食う。本来はイオンで食品を買った人に対して提供されている電子レンジを不正に使用する。非道徳的である。そうやって電気および電子レンジと座席にテーブルの施設利用権をかすめ取ってぼそぼそと昼飯を食う。そういう行為を強制させられる。おかしいではないか。差別ではないか。派遣社員だって人間である。大企業の横暴許すまじ。という言論になりがちである。

しかし冷静かつ常識的に考えていただきたいのだが、「フードコートで食え」といったのはこの社員の意見であって会社の総意というわけではないだろう。もちろん私がこの企業の就業規則細則を見たわけではないが、仮にも大企業が「派遣社員はイオンのフードコートで食うこと」という規定を定めているというのはあまりにも非現実的であろう。したがって常識的に考えれば、この社員がアホで非常識で配慮に欠けるアンポンタンであったと考えるのが自然だ。よって裁かれるべきがあるとすれば、それは他店の設備を無断で利用することを推奨したこのアホ社員であるはずだ。

こういう場面に自分が出くわした時は「こういうアンポンタンのバカでも大企業に入れるんだな」などと思って、しかし口では、はあ。などと適当な相槌を打つ、などがふつうの反応であると思われる。しかし、時折、「なんてひどい会社なんだ」と個人の問題を会社全体の問題にすり替えるひとがいる。しかも、自分が経験したわけでもないのに正義感ぶってヒートアップする人も居るからたちが悪い。

有名な例の一つが東芝クレーマー事件ではないだろうか。これは、コールセンターの人が「あんたみたいなのは客じゃなくてクレーマーっちゅうの」と暴言を吐いたことに端を発し、最終的に東芝製品不買運動まで広がった事件である。これも常識的に考えれば「いやー、うちのボンクラがお客様に対して無礼を働いて申し訳ありません」と菓子折りか何かを持ってきて「ほんと頼むよ。まじで」って感じで終わりそうなもんであるが、インターネット上で火がついてどんどん広まり、ついには不買運動まで発生した。人間の性質上、しょうがない部分もあるだろうが、しかし世の中には社員個人の問題を会社の体質の問題であると決めつけることが多いのは事実だ。

ハンバーガーショップの姉ちゃん、携帯ショップの姉ちゃん、市役所の姉ちゃんなどに対して、女だからとなめておるのだろう、「お前の会社はどうなってるんだ」などと怒鳴るしょうもないジジイを誰しもが1度は見たことがあるだろうが、それもそういう決めつけが原因である。

こういう人があまりにも多いので、企業側も昨今は「社員一人一人が会社の顔です」などと教育することも多いが、企業と労働者の関係を指し示す本質的なものではないと思う。あくまでも社員一人一人が会社の顔のように、責任感を持った行動をしようという決まりであり、そのサービスを受ける側の人間が「お前の言うことはお前の会社の意見と同じなのだな」と解釈するのは非常識的であるとおもう。

会社は無制限に消費者の利益になることを追及できるわけではないし、消費者は立場を変えれば企業に所属する社員であったりもする。企業だからと何でもかんでも求めるならば、自分が社員としての立場であるときに同じように無制限に求められるのを受け入れなければ筋が通らない。それは自分の首を絞めているのと同じだろうか。

結論

以上のように、さまざまな突っ込みどころが多々あるがそのベクトルは基本的に同一方向を向いている。「大企業vs一人の労働者」もしくは「正社員vs派遣社員」という問題に帰結させようとしている方向だ。大企業はその権力をもってして横暴をはたらいたらいかんし、派遣社員の労働環境も向上させないといかんだろう。でもそれを議論するための題材としてこれは適切か?関係ないんじゃないか?なんじゃかんじゃと理由をつけて文句を言いたいだけなんじゃないか?

私がもし、冒頭に乗せた教えて!gooの質問者に対して回答するとすれば、以下のように回答したい。

「世の中にはとんでもないアンポンタンがいるんですね。他店のフードコートを無断利用することを勧めるとは誰の目にも明らかに非常識な対応です。厚顔無恥なアホに出会ってしまった質問者の方にとってはまさに災難であったとしか言いようがありません。そういうバカに付き合っても疲れるだけで何も良いことはないので、辞めて正解だったと私も思います。」

ちなみに、派遣だからどうとか、差別がどうとかいうことに質問者は特に触れていない。

2件のコメント

  1. 匿名 より:

    はあ・・・
    知能が低い方が執筆されていますね。

    >ちなみにこれは差別ではなく区別である。

    違います。
    これらの事は「差別」と定義されています。
    一般常識です。
    一度、基本的な教養から学ばれてはいかがでしょうか。

    1. withpop より:

      差別の定義ですか。難しいですが以下あたりが参考になるのではないでしょうか。

      「ある集団ないしそこに属する個人が、他の主要な集団から社会的に忌避・排除されて不平等、不利益な取扱いをうけること」(三橋修)

      「個人の特性によるのではなく、ある社会的カテゴリーに属しているという理由で、普遍的な価値・規範(基本的人権)に反するしかたで、もしくは合理的に考えて状況に無関係な事柄に基づいて、異なった(不利益な)取り扱いをすること」(野口道彦)

      「本人の選択や責任とは関りのないような個人の能力、業績ないし個人の行動と無関係に作られた自然的・社会的区分に属していることを理由にされて、集団ないし個人が不利益を被るか人権を侵されるか、不愉快な思いをさせられる行為」(鈴木二郎)

      ソースは
      http://han.org/blog/2010/02/post-127.html
      です。

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