新型ノア(2014年式)を見てきた感想

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新型ノアとVOXY、昨日が発表だったということで、もう書いてもいいだろうと思い、書く。

こないだ、新型ノアの実写を見て触ったりしてきた。詳しい経緯については察して欲しい。路上に出て試乗は出来なかったけど、中身をじっくり見ることは出来た。

結論

初めに結論を書く。

私は走らせてて面白い車が欲しかった。それに対して新型ノア・VOXYはこれまでのモデルと同じく、走らせてて面白そうとはこれっぽっちも思えなかった(ある程度予期していたが)。

ただ、窓の広さ、視界のよさは驚嘆に値する。単純に家族を乗せる足として見た場合、なかなかいい選択肢かも知れない。

背景

うちは今、マイナーチェンジ前の30系プリウスに乗っている。家族構成は、夫婦にもうすぐ2歳の娘が一人。都内在住。普段、そこら辺を買い物で走り回るのと、2ヶ月に一回くらいのペースで旅行や帰省で遠出する。年間の走行距離は1万kmと少しだ。

最近、嫁さんが「スライドドアの車が欲しい」と言っている。私も、二人目が生まれたらミニバンを買わなきゃならんなあ。とは思う。

次期ファミリーカー選定に伴う夫婦二人の車に対する要求スペックは大体似通っていて、以下の様な感じだ。

  • スライドドアがあること
  • ミニバンであること
  • 燃費(km/lでなくkm/円)が良いこと
  • 走ってて面白い車であること
  • 視界が広い車であること
  • あまり大きくない車であること

こういう視点で見た時にノアはどうだったか。感じたことを記していく。

窓がでかい

窓がすごくでかい。窓の面積が単純に大きいのと、ピラーがじゃまにならないようなレイアウトになっている。おそらく、私が乗った今までの車の中で最も視界が良好だと思う。

今乗っているプリウスはとても視野が狭い。空気抵抗を小さくするために鋭角になっているフロントガラス、ぶっといAピラー、この2つが視界をかなり悪くしている。カーブや交差点で進行方向が見えない時が多々ある。プリウスは基本的に気に入ってる車なのだが、この点だけはどうにかならなかったのかといつも思う。

その点、ノアの視界は完璧で、たとえ車の運転が苦手な人であっても車幅感覚がつかみやすく、運転しやすいだろうと思う。

シートアレンジ

シートアレンジが多彩、ということも売りだそうだ。二列目シートは2つのシートをくっつけたり、離したり、ずっと後ろに移動させて足を伸ばしたり、いろいろなアレンジが効くらしい。

たとえば、チャイルドシートを横にくっつけた時にシートが離れていると、赤ちゃんの世話がしにくいとかいう場合があるので重宝する、という話を聞いた。

しかし私には特に魅力的に思えなかった。おむつを交換させるくらいの作業であれば、車を止めて一度チャイルドシートからおろすことになるし、水を飲ませるとかお菓子を食べさせるとかするならば、シートが離れていても対応できそうな気がする。

長距離移動が楽な姿勢をとれるという点ではいいかもしれない。けれども、そういう視点で選ぶのであれば、オデッセイみたいにオットマン的な機能が付いているシートの方に魅力を感じる。

また、三列目のシートを片手て跳ね上げて収納できるという点もメリットということであったが、そんなに何度も操作するところでは無いので、これも特別魅力とは思えなかった。

内装

内装はそんなに安っぽくないと思う。しかし、良くも無い。値段相応という感じだ。特筆すべき何かは無い。

上位グレードになるとアイボリー系の内装しか選べないらしい。残念という程でもないけれども、違和感があるというか。なんというか。あのアイボリー系の色合いは高級車をイメージしてるのかもしれないけど、私にはあんまり高級である印象は受けない。

個人的な好みではあるが、私は運転に集中できるので黒系が良い。

ハイブリッド仕様

あのパワートレーンはちょっと疑問だ。エンジンはプリウスと同じ2ZR-FXE(99[ps]/5200[rpm])、モーターは5JM(82[ps])。プリウスのモーターは3JMだが、出力は全く同じである。従って、プリウスのパワーと新型ノア/VOXYのパワーはほぼ同じと言っていいだろう。

プリウスはシステム全体で136馬力の出力がある。従って、ノアとVOXYもおそらく同程度だろう。パワーウェイトレシオを計算すると以下のようになる。

プリウス(1350kg):9.93kg/ps
ノア(ハイブリッド1620kg):11.91kg/ps
ノア(ガソリン1600kg):10.52kg/ps

パワーウェイトレシオは、1馬力あたりの車重で計算される値で、加速性能を図る簡易的な指標になる。大雑把に言うと、小さい値であるほうが加速は良い。

数値だけで言うと、11.91というのは良い値ではない。以下サイトでみると、ミニバンの中でも下位の方に位置する。

7人乗りミニバンのパワーウェイトレシオ ランキング (自然吸気限定)

ただし、だからといって加速が悪いかというと、そうも言い切れないところがある。一口に加速と言っても、どの速度帯からの加速であるか、また、トルクカーブがどうなってるか、そういうことにも大きく作用されるのでそもそも厳密な定義が難しい。それに加えて人間の感覚とはまあ曖昧なもんで、視点の位置で速度感覚が変わるくらいだから、これほど信頼出来ない測定系は無い。

たとえば、ゴルフトゥーランも同じミニバンで11kg/ps台の車であるが、これはトルクカーブの山をかなり前に持ってきているので、実際運転してみるとスペック以上の加速感を感じる。さらに、同じ11kg/ps近辺にはライバル車のセレナなんかも居るので、一般ユーザーにとって必要十分であるとも言えるのかもしれない。

しかしながら、プリウスに見られるような、もっさりとした加速感設定だとかなり遅く感じるのではないか。そんな気がする。ご存知の方も多いだろうが、プリウスはじめ多くのハイブリッドカーは、燃費を良くするためにあえてキビキビとしたアクセルワークにならないように調整されている。最近のアクセルは昔のようにエンジンに直結されたワイヤーではなく、一度電気信号に落ちてコンピュータで処理されてからエンジンスロットル開度などに反映されるので、アクセルの踏み具合がエンジンのスロットル開度とほとんど関係しない。

その事自体は、悪いことではない。でも、トヨタはなるべくカタログスペック通りの燃費を出させるために、燃費のいい走りをさせるような設定をしてくるだろう。つまり、アクセルを踏み込んでもリニアにエンジンがフケるわけではないような設定にするだろう。きっとそうだろう。

そもそも私は、プリウスよりもずっと重い車体を動かすのにプリウスと同等のエンジン+モーターを持ってくるとは思いもしなかった。1800ccエンジンとは言っても、ミラーサイクルエンジンで99馬力なのだ。もうちょっと出力を確保してもいいんじゃないか。

まあ、環境に配慮したやさしいハイブリッドで加速を語るほうがおかしいという意見もあるだろう。それも、ごもっともである。

大きさ

大きさがでかくなったのはユーザーにどう受け入れられるだろうか。ノアの全長は、前モデルからちょうど10cm大きくなった。ノアの前モデルの全長は4,595mm、今モデルは4,695mm、ちょうど10cm大きくなっている。ガソリン車は4,710[mm]である。5ナンバーの境目は、全長4.7[m]、全幅1.7[m]、全高2m[m]なので、ガソリン車は3ナンバーとなる。

私の認識が間違いでなければ、ステップワゴン、ノア、VOXYなどは5ナンバーのミニバンであるということが売りの一つだったはずでは無いだろうか。ガソリン車の3ナンバー設定はこれでよかったのだろうか。もっとも、1cmオーバーしているだけなので実質5ナンバーサイズとも言えなくもないが。

しかし、それでも前モデルから10cmも長くなっている。最近の車はみんな3ナンバー化する傾向がある。それは、日本の法令に合わせたサイズで設計するとグローバル展開する上で足かせとなるからだと聞いたことがある。

ユーザーにとっちゃメーカーの設計の都合なんか知ったこっちゃないってのが本音だが、しょうがないことなのだろう。私は都市圏で運転することが多いので、10cmの全長アップはあんまり嬉しくない。

トーションビーム

サスペンションは、フロントがストラット、リアがトーションビームである。まあ、トーションビームであることに疑いは無かったのだけど、やっぱり、他社のミニバンが軒並みダブルウィッシュボーンやマルチリンクを採用しているのを見ると残念な気持ちにはなる。

もちろん、トーションビームだからダメ、というわけではない。評価の高い外車でもトーションビームを採用している車種はある。そもそも車の乗り味というのは数え切れないほどのパラメーターが関わって来るので、サスの形式だけで一概に良いとか悪いとか決められるもんではない。

たとえば、これがアウディやプジョーで、トーションビームだったら、まあ、いいか。なんか理由があるんだろ。と思えるだろう。しかしトヨタでトーションビームというと、悪いがただのコストダウンであるという以上の印象は持てない。ノアとVOXYという車種に対して、乗り味とコストのトータルで見た時のベストな選択肢としてトーションビームが採用された、ということは信じがたい。

簡単に言う。ノア(VOXY)のトーションビーム、なのである。良いわけないのである。

車を趣味として見た場合、こういう「根拠は無くてもなんかヤダ」という気持ちは後々に響いてくるので、個人的にはある程度重視したい項目ではある。もしこれで、ノアを買い、ふにゃふにゃで全然踏ん張りの効かない足回りだった時に、「やっぱトーションビームだからなんだろうか…」と思うのは私なのである。これは、私の、私のための、私にしかわからない判断基準であるが、なんかいやなんだよ。

個人的な感想

新型ノア/VOXYはすでに3万台の受注を受けているという。これはすごい売り上げだと思う。

その理由は私が思うに、ハイブリッドであること、シートアレンジ、視界の確保、5ナンバーサイズの車体、というあたりにあると思う。目に見える単純な機能やスペックを比較した場合に分かりやすい長所が勢揃いしている。

普通にミニバンとして要求される性能、すなわち、大きな荷物、たくさんの人を載せて、気持ちい眺めで運転したい。そういう要望には難なく答えることが出来るだろう。でも、元々車を運転するのが好きな層、車そのものが好きな層に訴える「何か」というのは皆無に感じる。

ぶっちゃけて言うと、「ほらほら、トヨタのハイブリッドシステムが乗ったぜ。THSだぜ。世界が認めたTHSだぜ。いいだろ。ミニバンでこんなに燃費良い車ないぜ。いいだろ。電動スライドドアだぜ。ボタン式だぜ。3列シート跳ね上げだぜ。お前らはこういうの好きなんだろ?好きなんだったら買えよ」という商業的なメッセージしか伝わってこないんだ。

そもそも、すでに予約で3万台という数字がある程度それを物語っていると思う。私であれば試乗もしていないのに車なんか絶対に買えない。それは、車にはスペック表には現れない、運転してみないとわからない個性や性能というのが存在するからだ。

例えば、カーブを曲がった時のロールする感じ。Gの移動。アクセルの踏み具合に対する出力のレスポンス。内装の質感。ドアを閉めた時の音。スイッチ類の操作感。そういう物一つ一つ、車好きならこだわって当然だ。しかし、試乗もせず購入を決めた人にはそういう気持ちが無いか、薄いかのどちらかだろう。カタログスペックを見て、カタログに載せられた機能を見て、それで要求仕様を十分満足すると判断して購入を決定する。そういうことだろう。もちろん、それは悪いことではなく、単に車に求める価値が異なるというだけだ。

しかし、私はこう思う。トヨタはCMでさんざん「Fun to Drive, Again」とかやってるじゃないか。あれは何だったのか。

昔の車は面白かった。でも今の車は面白く無い。今の車は極度の制作効率化とエコ性能の追求、さらにまずマーケティングありきのモノづくり。サス、剛性、レスポンス、ハンドリング、そういう見えないしライトユーザーに訴求できない性能はゴリゴリコストダウンされる。ボディは欧州車をイメージして前倣えすればよい。イカリングが流行ったらイカリング、LEDデイライトが流行ったらLEDデイライト。

そんな発想で車好きにとって面白いわけがない。車好きが生まれるはずもない。これでは次世代のユーザーを取り込むことができない。そういった反省が「Fun to Drive, Again」じゃねーのか。そういう反省をして、安くて小さい手頃なFR、トヨタ86を作ったんじゃねーのか。あれで終わりか。

で、何年も前から出る出る言っといて、満を持して登場したミニバンがこれすか。私は先ほど「車は試乗してみないとわからないことがたくさんある」と書いた。裏を返せば、乗ってないのにダメだと決めつけることは出来ない。けれども、私はこんなノア/VOXYであれば、試乗する気も失せてくる。試乗するのにも予約したり何なりと手間暇をかけるのである。その価値は無いと判断したのである。

昔は車好きだったけど、家族が出来てからはあまり尖った車を買うことも出来ない。せめてミニバンでも乗っていて楽しい車を・・・。もしくは、ただの車なんて面白く無い。なんか個性的な車が欲しい。そんな感じのユーザー層を受け止めてくれる車はトヨタさんは作ってくれないんですか。そうすか。ダメすか。了解です。どうも。

私はハイブリッド ノア/VOXYが良かったらまじめに買おうと思っていたので普通に残念です。