ボリンジャーバンドとソフト屋

大昔、ネットの掲示板で以下の様な事を言っている人がいた。もうログも残ってないので記憶で書いている。


A「俺はデイトレードで1日1~2万くらいは稼いでるよ」
B「嘘つけ」
C「嘘つくな」
D「証拠みせろ証拠」
A「本当だって。50万かけて株価の予測ソフトを発注したんだよ。株価はボリンジャーバンドの±2σに95%の確率で収まるという性質を応用して、買い推奨銘柄と売り推奨銘柄を表示させるんだよね。」
B「おお・・・」
C「なるほど・・・50万か」
D「なるほど・・・・ボリンジャーバンド・・・」


その後、掲示板の雰囲気は一気に「こいつすげえ」「50万すげえ」「ボリンジャーバンドすげえ、俺も昔からボリンジャーバンドは出来るやつだと思ってたんだよねー」「シグマも小学校一緒だったけど、良い奴だったよ」みたいな雰囲気に包まれ、俺はこいつらアホじゃないかな、と思っていた。

アホだと思った理由その1。なんにもわからんくせに、専門用語が出てきただけで「すげーすげー」とか言っちゃうあたり。

アホだと思った理由その2。「株価はボリンジャーバンドの±2σに95%の確率で収まるという性質」という発言と、それをすげーと言うあたり。

アホだと思った理由その3。「50万かけて株価の予測ソフトを発注した」という発言と、それをすげーと言うあたり。

その1について。たまーに、テクニカルタームとか英語とか難しい単語を面白がって使って、まるで自分がインテリジェントな人物であると恣意的にミスリードさせようとしてるかのような人とディスカッションすることがあるんだけど、そういうのってその人のバックグラウンドにあるポリシーとかライフスタイルにフィロソフィーが感じられないっていうか、ひどく表面的であって、コンテクストが全然ミーニングフルじゃないし、エデュケーテッドでその道のナレッジを十分に兼ね揃えた人から見ると片腹痛いっていうか。それだけでもうかなり痛々しいのに、さらにそれになびいちゃってる人がいたりすると、もう俺はサプライズパーティまっしぐらっていうか、ホームパーティにネイティブなシビリアンを招待するっていうか、結局、テクニカルタームを聞いただけですげーと思っちゃうのって、自分のオピニオンが全然無くてただテクニカルでファンダメンタルなキーワードが持っている、感覚的なオーソリティにフォローするのって、コアコンピタンスは他人とのコミュニケーションにおける、相手のエクスプレッションを敏感に察知するためのセンシティビティだけっていうか、そういう他人の顔色を伺って同意することがうまいリレーションシップのコンストラクションメソッドだと盲信しているブラインドマンなのであって、ダイバーシティな視点を持たず、物事へのフォーカシングも甘いし、一切のクリエイティビティも感じさせず、なんかすげー情けなくて金魚のフンみたいなアイデンティティの無さしか感じられないんだよね。モラトリアム期間を合コンする時間だと勘違いしてるようなアホがよくやるよね。マジでヤバイ。ハンパないよねー。だよねー。

その2について。ボリンジャーバンドってのは単に、過去の株価の何点かを抽出して移動平均と標準偏差を導き出して、それをプロットしただけであって、それ以上の意味は無い。±2σに95%が収まるんじゃなくて、母集団から抽出した過去何点かの株価から類推して母集団の95%が収まるような境界線を引いたら、それが±2σになるのである。±2σに95%が収まる性質があるんじゃなくて、95%が収まる線を引いたら±2σになるのである。逆である。

もっと言うならば、株価が本当に正規分布する事象かどうかなんて分かるはずがなく、そういうのも承知した上で、あくまでもボリンジャーバンドは「指標」の一つなのである。「株価はボリンジャーバンドの±2σに95%の確率で収まるという性質がある」と言ってしまったら、それは株価変動の本質をボリンジャーバンドで記述できてしまうということだ。「物体は外部から力を与えられない限り同じ速度で移動し続ける性質がある」と同じ感じ。

その3について。50万なんて、ソフト開発でははした金である。そら、個人で見たら多くの人にとって50万円は大金なのであって、大金かけてなんかすげーソフト作ってもらった、と思うだろうが、残念ながら50万あったところで大したソフトはできない。安いところに発注したら、もしかしたらエンジニア一人1ヶ月くらいは確保出来るのかもしれないけど、普通の会社だったら1ヶ月は厳しいだろう。オフショアに出したら2人で2ヶ月くらいは堅いかも知れない。

でもあまり安いところに出しても技術力がないから、とくに株価のテクニカル分析なんて分野だとまともなソフトは出来上がってこないだろう。すると、やっぱり半月くらいでそれなりにまともな会社に作ってもらう事となる気がする。じゃあ2週間で何が出来るのかというと、ネットから過去の株価を拾ってきてボリンジャーバンドを書いて、そこから決められたルールとトリガにマッチした銘柄を出すくらいじゃないかな。しかも、エクセルを使って、とかで。一から作ったとしてね。カスタマイズ可能なパッケージがあれば、もうちょっとマシなものは出来るかもしれないけど、そういう会社は個人から50万の仕事は受けない気がする。

ちなみに、俺が2週間働いたらもっとマシなソフトを作る自信がある。そしてそういう人はいっぱいいるだろう。じゃあなぜそういう自信のある人が、月間何百万分も働いて、微々たる給料しかもらえないのかというと、これ、サラリーマン全てに共通することであるが、サラリーマンが稼いだ給料は、椅子にふんぞり返ってる管理職のボーナス・有料とか、よくわからんソフト・設備の固定資産税とか、よくわからん銀行の利払などに消えていくからである。

しかしながら、ソフトの請負から製造、テスト、納入までこなす人なんかは、はっきり言って管理職なんか居なくても仕事が出来るのであり、そういうところを省いたらものすごい金持ちになるよね。そういう気持ちを持った人が起業するんだと思うな。

あと、これもちょっと話が変わるのだけど、デイトレとかのセミナーとかもいいところに目をつけると思うな。俺がデイトレの知識を十分以上に身につけることができたならば、俺もそうやって稼ぐと思う。デイトレは大損するリスクがあるけど、セミナー開いて金を取るのは損をしない堅実な稼ぎ方だもん。念のため言っておくが、これは単にリスクテイカーかどうか、という性格の問題であって、良いとか悪いとかいう問題ではない。

同じように、俺がもし株価変動とか為替変動とかを予測するソフトを作ったとしても、それを使って自分で取引することはまず無いだろうな。そのソフトを売ったほうが堅実だもの。だからそれをやりたいと2週間くらい前から考えているんだが、暇が無く、なかなかできない。いや、やっぱり、金があったら株も少しは買ってみたい。

働けど働けど我がくらし楽にならざり、ぢっとすり減ったキートップを見る。