とってもわかりやすい送電の話と日本の未来

すっごいわかりやすい送電の話があったので、紹介する。個人的には、全日本国民に読んでもらいたいくらいだ。

電力をインターネット化するデジタルグリッド

上記で述べられているように、電力は「基本的に」貯めておくことができない。これが、風力・太陽光発電で原子力・火力発電を代替できない理由である。3.11以降、さかんに自然エネルギーや再生可能エネルギーによる原子力発電所の代替論を耳にするが、こういったあたりが全く考慮されていないように思える。

設備容量だけを比べて原子力発電所が不要だ、という理論は現実的でない。上記記事にあるように、出力変動の大きい発電方法で、出力一定の発電設備を代替できることは不可能であるからだ。出力変動の大きい発電方法を使って、日本国内で「安定して」使える電気の容量を増やすためには、ガスタービンやコンバインドサイクルなどの発電設備を増やす必要がある。出力変動が大きい発電方法を、出力が可変できる発電方法で代替するのである。

じゃあこの方法は日本にとってベストな選択肢だろうか?いや、大きな問題を抱えている方法である。この方法はコストとエネルギーセキュリティの問題を考慮していない。

コストの問題とは、つまり、ガスタービンとコンバインドサイクルの設備容量を増やすためのコスト、自然エネルギー発電そのもののコストである。どちらも、最終的に負担するのは電気を消費する一般家庭や企業である。電気料金に転嫁されるのである。電気とはいわば産業の血液である。必要なエネルギーを必要なところに届けるために媒介とされるものである。その重要な生命線を確保するコストを無闇やたらに上げるというのは全く得策ではない。ただでさえ、震災以降に増大した石油・LNGガスの輸入によって年間4兆円もの国富が海外に流出していると言われる状況で、さらに電気のコストを上げる方向に舵を取るというのは、日本にとってはありえないオプションだ。

また、エネルギーセキュリティの問題とは、簡単に言うと、「自分で使う分のエネルギーをどうやって自力で確保するか」という問題である。LNGや石油は他国の事情で簡単にコストが上がったり、手に入らなくなってしまう。その支配権が相手国にあるということは、相手国の外交カードを一つ増やしてしまうということである。これは外交政策上でも問題となる。先の大戦で、アメリカが石油の禁輸措置を決定したことが、日米開戦に大きく関与していることをも忘れてはならない。エネルギーを確保できるかどうかは、一つの国にとって死活問題であることに違いないのである。現代もなお、エネルギー上のリスクは無くなってはないない。イラク戦争以降、原油価格が高騰したこと、日本の原油輸入のシーレーン上に、ソマリアがあったり、台湾沖があったりすることをよく考えるべきだ。

また、これは余談であるが、「電力会社は原子力発電のコストを安く見積もるためにわざと石油・ガスを高値で買っている」という論をたまに耳にするが、これも理解に苦しむ。なぜ人は陰謀論を好むのだろうか。まず、電力会社が中東に原油を買いに行ったり、東南アジアにLNGを買いに行ったりしていると思っている事自体、あまりにも経済・社会に対して無知と言わざるをえない。LNGや石油を海外から買い付ける仕事をしている会社は、普通、商社である。電力会社は、商社から石油やLNGを調達しているのである。例えば、東電はLNGを三井物産から調達している。前述のような陰謀論を信じる人は、商社まで巻き込んで情報統制しているとでも主張するのだろうか?もしそこまで大規模な情報統制を行う方法を知っているのであれば、CIAとかKGBに就職できるんじゃないかな。

特にLNGだが、震災以降価格が高騰しているのは、単純に、需要量が急増したからである。需要量が供給量に対して大きくなれば価格が高騰するのは経済の基礎中の基礎である。今までよりもずっと多い量のLNGを手に入れなければならないのならば、普段付き合いのないところにも頭を下げなくてはならないだろう。そしたら足元を見られるのは当然である。値段を高くしても売れるのだったら、売る方は当然値段を高くする。そうして需要と供給の関係が生まれる。あたりまえのことだ。

話がそれたけど、それでは、今後の日本はどうやって電力を確保していけば良いのだろうか?というと、これは私の個人的な意見であるが、やはり少なくとも今後10年~20年間は原子力以外にはありえないと思う。

そもそも、震災以前は、日本の中で原子力+火力・水力という方針がうまく行っていたことは間違いない。日本は資源小国と言われるが、その資源小国の日本において原子力発電と核燃料サイクルという選択肢はエネルギーセキュリティを確保するための一つの回答であった。この背景があることも忘れてはならない。原子炉を廃炉にするためにも、原子炉を扱う技術者をもう少しの間食わせていかなくてならないという現実から目を背けることもできない。

前述の記事にあるように、昨今ではスマートグリッドなどのキーワードが注目をあびるようになってきた。しかし、今後、日本の発電がどういう方向に進むにしろ、大規模な設備投資は必要である。その間、日本に年間4兆円もの損失を被り続ける体力はあるだろうか?そして、国民と企業が高いLNGを買い続けながら、さらに電力・送電に設備投資し続けることはできるのだろうか?私は経済の専門家ではないが、これは甚だ疑問だ。

安全が確認された原子炉は稼働する。そうして電力会社の収支を改善させる。得られた利益は次世代の発送電設備と技術開発に投資したり、福島の復興に回す。次世代の発送電を行うためのインフラと技術が十分整ったならば、再生可能エネルギーでも核融合発電でも衛星軌道上ソーラーパネルからのマイクロ波発電でも、なんでも好きな事をやったらよろしい。でも、そこにたどり着くために必要な資金は、現在すでにある設備を動かして稼ぐ。これが最も論理的な解であると私は率直に思うのだけど、どうだろうか。この現実解を否定する理由が何かあるだろうか。

これも私の個人的な感想と意見であるが、日本人が原子炉を毛嫌いする理由は、偏向した報道と情報による、原子力に対する実態のない負のイメージと、日本人特有のゼロリスクを追い求める姿勢にあると思う。これらは全く非論理的だ。感情論でお涙頂戴のストーリーを作るのもいいし、「原子力反対、子どもたちの未来の為に」などと、本来なんの関係もない二者を結合させ、子どもや母親の写真をでかでかと貼り付けた選挙ポスターを作るのもいいと思う。「NO NUKE」とか叫んで音楽祭をやって、善人ぶって客を集めようとするのもいいと思う。でも国民がバカだったら国は崩壊する。いちいちネットの情報や、なんの知識も持たない政治家・音楽家の意見に自分の意見を委ねていても全然意味がない。

日本人は国の未来に興味を持つべきである。