漫画の魅力、俺の人生と漫画家

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私は結構漫画が好きです。

好きな漫画を上げるとすれば、「僕といっしょ」、「ボンボン坂高校演劇部」、「ヒミズ」、「AKIRA」、「BLAME!」、「ABBARA」、「BIOMEGA」、「MOONLIGHT MILE」、「プラネテス」、「医龍」、「羊のうた」、「闇金ウシジマくん」、「THE WORLD IS MINE」、「なるたる」、「茄子」、「攻殻機動隊」、他、大友克洋の短篇集とか、そのへんである。

私の好きな漫画は、まあ、「SF」か「救いようのない話」に大別できる。でもこうやって俯瞰してみると、「ボンボン坂高校演劇部」だけちょっと浮いているな。でも、ボンボン坂高校演劇部は好きだ。あれはジャンプ最後の正統派ラブコメだと思う。だから好き。まー、10年以上ジャンプ読んでないけど。

こうして見ると二瓶勉が多い。二瓶勉を知ったのは去年くらいだった気がするけど、これがまた、かなり面白い。二瓶勉のいいところは、むちゃくちゃな設定をさらりと出してしまうことだと思う。人造人間とか、クローン人間とか、両性具有とか、光合成人間とか、ケイ素生物とか。他のSFだったら、なぜそういった技術が可能になったかを細かく説明するところにも焦点をおき、その解説の過程そのものがSFとしての体をなしている、と、私は思うのだが、二瓶勉作品にはそういう素振りは全くない。

「あんまり詳しく説明するとリアリティが失われる。読者の想像に頼ったほうがよりリアリティが出る」ということでそういうふうにしているが、これは、結構正しいと思う。手前味噌で悪いけど、私も絵を書くとき、そういうことを考慮に入れて書いてたりする。よくわからないものがあったときに、それを勝手に補完するのは人間の脳みその一つの能力である。

私が知る限り、こういうSFは無い。そういう点で、新鮮で好き。

「羊のうた」「なるたる」「闇金ウシジマくん」「ヒミズ」あたりは、救いようのない話の代表格ではないだろうか。一応、どれもハッピーエンドと言えばそうとも思えるようなエピソードがあるが、そのバランスがいい感じだと思う。ちょくちょく救いを見せるけど、基本的には救われない。報われない。そんな感じが好き。なぜ暗い話が好きなのかというと、説明できない。まあ、どれも有名な漫画で、読者がいっぱいいるので、そんなに特殊なことではないだろう。

最近読んだ漫画は、まず、「彼岸島」だ。これはとってもファンシーなギャグ漫画だと思う。「いくぞぉ!」って、日本刀がゴロゴロ転がってる中から丸太を武器に選んだりする素敵な漫画である。小さな村しか存在しない隔離された島で、なぜか生物兵器を量産するハイテク設備が整っていたり、それを守る人間が長ヤリを担いだ全時代的な兵士だったり、意味がわからない。ギャグ漫画としては秀逸だと思う。ギャグ漫画としては。

あとは、「喧嘩商売」だろうか。同作者の前の作品である「代表人」「泣くよウグイス」「幕張」はいずれも好きだったが、「喧嘩商売」は、まあ、面白いけど、あんまり好きじゃない。10巻くらいまでは面白かったけど、正直、女子高生とセックスするのは犯罪かどうか、みたいなネタが延々続くのは飽きる。「チンコイレタラ…山の神…オコル…」とか、「女のエロさは身長に反比例する!」とかいうあたりのネタは普通に笑えたけど、この辺でやめとけばよかったんじゃないかな。15巻あたりからやけに真面目に格闘漫画に進み始めたので、もう淫行条例に反対する漫画なんだか、格闘漫画なんだか、意味がわからなくなってきている。正直、ネタについていけないところがある。

「空が灰色だから」も最近読んだな。これは絵柄が好きじゃない。なんか萌え絵、みたいな感じなんかな。あんまり好きじゃない。好きじゃないけど面白かった。これも救いようがない話がいっぱいあったり、単純にキチガイじみてる話がいっぱいあってすごくいい。ずっと仲のよかった幼馴染がいるんだけど、実は仲がいいというのは自分の妄想で、相手は自分のことをむしろ避けていた。みたいな感じ。それも絶望に打ちひしがれて周りの人が冷たい視線を送るシーンでいきなり終わる。いい。すごくいい。

最近読み返した漫画でいうと、「頭文字D」とかだな。知らない間に最終回を迎えて終わっていたということであって、まあ、どんな話だっけ?と読み返してみた。そしたら、すごい面白かった。10巻くらいまでは本当に面白い。特に車に興味がない、けど、車を早く走らせることに特化している主人公が、だんだんに車に乗る楽しさに目覚めていく、そのサイドストーリーとして、なつきちゃんとのラブストーリーがあって、すごく収まりがいい。

ほんで、そのなつきちゃんもただの女子高生じゃなくて、ベンツ乗ってるオッサンに月30万もらって援助交際してるアッパッパーであって、しかし、そのアッパッパーが感じられないほど素直な一面を見せるところとかもあって。たとえば、そのオッサンを切るシーンのやり取りなんかは、オッサンのことを好きだったけど、でも、お金もらうのはやっぱおかしいという気持ちがあって、それに、他に気になる男の子もできた、自分でもどうしたらいいかわからない。パパとはもう会えないけど、そういう自分自身もあまりに酷くて嫌、みたいな、複雑な心情をよく描いていると思う。

私はもう素直にすごいと思うんだけど、たぶん作者は単なる車オタクだと思う。その証拠に、頭文字Dは20巻あたりから本当につまらなくて、「ドギャアアア」みたいな効果音とともに、いかに昔のトヨタ車が優れていて、日産GTRがダメか、みたいな解説に終始するのであって、はっきり言って、そこら辺の偉そうな、外車ばかり褒める自称車評論家のクソむかつく記事を読んでるのと大差ないとすら思えてしまう。

しかし、そのオッサンが、あの複雑な女子高生の心情を旨く描画しているというのはかなり興味深い。

同様の傾向は「シャコタン☆ブギ」にもあるが、これはどちらかというと、作者が若い頃に遊んでいた男女の付き合いの中で、よくある「あるあるネタ」みたいものに近い。これはこれで単純に楽しめるし、面白いのだけど、先の例のように複雑な心情を描いているとは言いがたい。

いずれにしろ、やはりこういう漫画は作者の経験がものを言うと思う。なぜオッサンが援交女子高生の複雑な心情を描画できるのか?それはやっぱりそういう経験があるのだろう。じゃあ、作者は金で女子高生買ってたの?っていうふうに聞こえるけど、いや、そうじゃなくて、こう、そういう女子高生とか、まだ若い女の心情をよく読み取り、観察し、汲み取って描いてるな、ってことだよ。それができるのは単純に経験の豊富さと、感受性の豊かさ、さらに表現力、それらの乗算によって生み出されるマジックだろう。

で、最後はやっぱりいつも同じはなしに行き着くんだけど。

それに比べて、なんですか?なぜワンピースみたいなクソ漫画が評価されるのだろう。全く理解できない。あんなお涙頂戴みたいな安易なストーリーで泣けるやつの気がしれない。あんまり読んでないけど、ワンピースで述べているのは「ぁたしたち…それでも…ズッ友だよ…!!」って言ってるのと大差なくて、なんらの深みも感じさせない。ドラゴンボールも意味が分からん。戦闘力の新記録に挑戦!!みたいな漫画だろ。ストーリーもクソも無い。

とにかく俺は、あのワンピースドラゴンボールコンビが未だに印税稼いでるのが全然理解できん。理解できないだけで、まあ別にいいんだけどね。それを見て「めっちゃいいよねー」とか、「めっちゃ泣けるよねー」とかいう人間がわんさか増えたとしても、俺の給料が減るわけでもないし、世界から戦争がなくなるわけでもない。俺の人生に一片の影響も与えない。したがってすこぶるどうでもいい。完全にどうでもいい。

何人かには自慢げに言ったことがあるんだけど、実は俺、出版社から「漫画家にならないか」としつこくアピールを受けていたことがある。有名出版社のメールアドレスを見て興奮した覚えがある。その時俺は秋田にいたんだけど、奴、曰く、いいからお前は東京に来い、東京に来て、そこから話は始まる。お前のサクセスストーリーが始まる。だからまず東京に来い。っていう話から始まって、お前から連絡とってきたくせに、いきなり、
東京に来いとか何様のつもりなの?そういう事言うなら新幹線の指定席特急乗車券くらい送ってこいよ。ドアホ。みたいなことを遠まわしに言ったりした。

ほかにも、新聞に載せる広告を書いてくれる人を探している。これは1ページぶち抜きで一流の車メーカーの宣伝だ。とか、ホントかどうか分からんメールをもらったこともある。広告代理店には疎いのでよく分からんが、聞いたことも無いような会社だった。これも、こんな分不相応な役をお前にオファーしてやってるんだぜ、みたいな感じが文面ににじみ出ていて、アホか、俺は社会人じゃ、忙しいんじゃ、舐めんな。もうちょっと頼み方を勉強してから来い、みたいなことを遠まわしに言ったりした。

今になって思うんだけど、もし、あのとき、あのオファーを受けていたら、俺の人生、変わったかもしれんな…って。もちろん、俺が上記に上げた以上のヒット作を生み出せるなんてことはこれっぽっちも思っていないけど、たとえば、俺の描いた漫画に対して、ブログとかファンレターとかで、一人でも、ワンピースやドラゴンボールよりも面白い、っていうことを言ってくれる人がいたとしたら・・・。その時は、なんかすごい嬉しいと思う。

しかしながら、人生とは選択である。友達を選べ。住宅を選べ。住宅ローンを選べ。人生を選べ。俺にとってクリエイターの人生はありえなかった。超ハイリスク、未知数リターンな選択肢はどう考えても悪手である。

俺が後悔するとすれば、おそらくその一点だけだろう。この世界の中で、一人でも、ワンピースよりもお前の描いた漫画のほうが面白いよ。そういってくれる人がいたならば、ひひひ、俺は幸せである。その矮小な私のプライドを守るためだけの、しょうもない、素晴らしい人生が私を待っていることだろう。めっちゃ古いビジネスホテルの煙草臭いシングルルームの片隅にある、プラスチックのボールペンで、醤油の染み付いたメモ帳に描いたようなプライドを守るための人生、それはそれで面白かったと思う。「量子宇宙干渉機」が発明されたら、そういう人生を観察してみるのも面白かっただろう。ジェイムズ・P・ホーガン。