いろんなところから抜け出す夢

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こういう夢を見た。

俺は骨を折って入院している。病院には風呂がないので、近くの銭湯によく出かけている。

入院生活の中で、何人かのおっちゃんと仲良くなった。入院生活は暇でやることが無いので、日がな一日、寝転がって喋ったり、テレビを見たりしていた。骨を折ったところはすっかり良くなって、いつ退院できるんだろうとずっと考えていたが全然退院できる気配がない。医者は何も言わない。

ある日、風呂から帰ってくると、おっちゃん二人がさび付いた自転車を修理している。何をやっているのかと聞くと、「この病院はおかしい。俺たちを退院させる気が無いみたいだ。ここにいたら馬鹿になる。だから、この壊れた自転車を修理してここを抜け出すつもりだ」という事を言っている。そうか。俺もそんな気がするから、そうするよ。先生に退院して良いかどうか聞いてくる、と言うと、「お前は馬鹿か、すでに馬鹿なのか。医者に言ってどうする。内緒で出て行くのに」と言われ、なるほど、と思った俺はじゃあ自転車を直すのを手伝うよ、と提案した。

自転車はさび付いていたけど、丹念に油をさし、チェーンを動かしてにじみ出てきた錆びをパーツクリーナーで落とし。それを繰り返すとそれなりに動くようになった。

おっちゃんが言う。「ありがとうな。もう一台はお前にやるよ。一緒にここを抜けだそう」と言う。俺はおっちゃんに丁寧に礼を述べ、チャリにまたがった。

と言っても俺には帰るための家らしい家が無くて、唯一帰ることができそうなのは、親戚の家くらいだった。その親戚の家に私と妹が居候している。親戚は私たちにすごく良くしてくれる。毎日食いきれないくらいの料理を作ってくれる。小さい子供が3~4人いて、みな私と妹になついている。が、やはり自分の家ではないので居心地はそんなに良くない。でも、他に行く場所も無いので、そこに行くこととした。

また、その居候の家で風呂に入っていた。よく風呂に入る夢だ。

風呂から上がり、暗い廊下を抜けると、そとは雨。夜9時を回った辺りか。子供は皆寝ていて、木の床がきしむ音と、雨が屋根を打つ音だけが響いている。涼しい夜だ。車庫からぼんやりと外を眺め帰ろうとすると、妹が風呂から上がってきたところであって、俺の袖を引っ張り部屋に引き入れる。何事だと問うと、「私はここはもう嫌だ。帰りたい。みんな良くしてくれるけど、その裏の気持ちがどうなのかを考えるとどうにも居心地が悪い。ここは私たちの本当の家ではないし。一緒に家に帰ろう」と言う。

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うーん、そうか。それもそうだな。と、思った。で、妹と二人、帰ることにした。

親戚のおばちゃんに、お世話になった、帰るよ。と言うと、いやいや、ガーデニングのテクニックをこれから教えるからもうちょっとゆっくりしていけ、と言う。おばちゃんはガーデニングが趣味らしく、自分の子供にガーデニングを仕込みたいが子供が全然興味を示さないので、代わりに矛先が我々に向いているらしい。しょうがないので、曖昧に相づちをうち、妹と二人でこっそりと家を抜け出した。朝顔とラベンダーと紫陽花が咲き連ねている庭を抜けた。

ここからちょっと曖昧で、どういう訳か私は結婚式の招待状を貰った。

相手はAとB。どちらも古い知り合いであって、どちらも現実ではそれぞれ別の人と結婚しているが、なぜかその二人が結婚することになっている。

俺ははっきり言ってAもBも好きではなかった。仲良くもなかった。それが、母校が一緒だからという理由で俺に声をかけてきたというのが嫌だ。大体、お前ら、学校以外で一緒に遊んだことほとんど無いやんけ。と思った。だから、断ろうと思った。

で、断るために直接出向く事となった。招待状には「プレウェディング」みたいなことが記されていて、結婚式本番の前に一度集まりましょう、みたいな趣旨が併記されている。なんだこれ。めんどくせーと思いつつ、近いからもう直接行って断ったれ、と思った。

行ってびっくりした。会場は私の出身大学だ。なぜか。そこが大幅に改装され、結婚式会場へと変貌している。だだっ広い敷地に1000人くらいが詰めかけている。なんだなんだ。俺はAもBも、こいつらそろいもそろって性格が最悪で、とんでもねー夫婦が完成したな、世も末だな、と思っていたのだが。なんだなんだ、こいつらはこんなに皆に慕われていたのか。なんかすっごく悔しい。俺ははっきり言って、こういう、AやBみたいに人の気持ちを考えず、自分の都合だけで人に不快感を与えるクソ野郎にはなるまい、真人間な、まともな大人になるべきであるという心情のもと、今日まで努力してきたのであって、それをば、何ですか?こいつらの結婚式には1000人が詰めかけるのですか?そんなに慕われているのですか?SNSでもイイネ!がいっぱい付いたりするのん?はっきり言ってすごくむかつく。悔しい。

そんなこんなでますます嫌な気分になり、俺は、さっさと断りを入れて帰ろうと思ったんだけど、なんだか人の流れに流され。人混みに流され。変わっていく私。気付いたら、なんか懐かしい友達もいっぱい居て、おー、久しぶりじゃん!みたいな感じで盛り上がって、気付くと会合に参加していた。

その会合、すなわち、「プレウェディング」とやらは一体全体なんなのかというと。

今度、私たちのウェディングがあるんだけど、そこで参加者の皆さんは、決して粗相の無いように、練習をしてから参加してくださいね。結婚式の練習を。いいですか、私たちの人生に一度の結婚式ですので。決して粗相の無いように。プレウェディングに参加しなかった人は当日、入場出来ませんので。二次会からの参加となります。あらかじめご了承ください。とか、な、な、な、何様じゃ!こら!お前ら何様じゃ!って言いたくなるようなことが渡されたプリントに書いてあって。

俺はスタッフを殴りそうになった。でも、スタッフは悪くない。っていうか、このスタッフの量もなんですか?これ?どんだけ金かけてんの?

というかな、こんなに上から目線の結婚式なんて誰も参加しねーだろ、もういいや・・・帰ろうかな・・・という気分になってきた頃、急にキャーキャー言い始める一団があって、そっちの方を見るとAがタキシードで、Bがウェディングドレス姿で登場。え?練習なのにもうドレス披露しちゃうの・・・?

近くの人に聞くと、なんでも、今は「ブーケトス」の練習をしているそうで。はあ・・・。もう何でもいいっすよ。

新郎新婦が、そのキャーキャー言ってる集団と共に坂を下ってくる。なんだか新婦はすごく歩きづらそうにしている。坂を下ったところでキャーキャー言ってる集団が二分され、新婦の後ろに女が一列に並んだ。新婦が思いきりブーケを後ろに放り投げると同時に、盛大に転んだ。なにやってんだ?とよくよく目をこらしてみると、新婦のドレスのスカートの中から、マネキンの足が出ている。足が計4本ある。え?なにこれ?もしかしてマネキンごとドレス着てんの?なんだかもう意味わかんないんですけど。

その茶番が終わった後、坂の上にステージがせり出してきて、こんどはギターを持った新郎が登場、やかましいだけのへったくそな歌を歌い始めた。もういい加減にしろ。しかしそれでもキャーキャー言う集団がステージに殺到。その数はどんどんふくれあがり、2~300人になっている。

もう完全にあきれた俺。空だけが異常に高かった。典型的な秋の空だ。秋は美しい。稲穂が収穫され、あんなに賑やかだった田んぼが一気に落ち着きをみせる。稲のにおいに包まれながら、いずれやってくる冬を感じる。そんな美しい秋の一日に、一体こいつらは何をやってるんだろうと思う。人間はみんな馬鹿で、自然だけが美しい。稲穂だけが。コンバインが刈り取った、稲穂が田んぼに散らばっていて。

控え室に戻ると、同じように呆れ果てた友人数人が酒を片手に寝そべっている。良いじゃん。俺はこういう感じのほうが良いな。

ということで、俺も酒を手に取り、友達と一緒にしょうもない話をしてゲラゲラと笑う。友達の一人にものすごい面白いギャグを連発するのがいて、俺はずっと笑い続けて居た。そしたら、その友達から真顔で「もうそんなに無理して笑わなくて良いから。わざとらしいんだよ」とかキレられる。俺は落ち込んだ。別に心の底から笑ってたんですけど・・・。

なんつうか、もう、結婚式行かない、って言いに来ただけなのに、なんかすげー気分悪いなあ。嫌だなあ。大嫌いだった友達は大勢に慕われてるし、旧友にはお前ウザイから、みたいな感じに言われるし。なんか居場所が無いなあ・・・。

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外に出るとちょっと薄暗くなっている。新郎のライブはどんどん盛り上がってる。ここまで来るとなんか異常だな・・・と思って近寄ってみると、スタッフがなんか紙に包まれた小さな筒のようなものを参加者に渡していて、皆はそれをタバコのようにふかしている。それを吸った人は目がうつろになり、ニヤニヤ笑いながらステージの前に集合し、アホのように踊り狂ったり、人前で性行為を始めたりして、なんだかもうマジキチな集団と化している。

これ、明らかに違法な葉っぱだよなあ・・・。ウェディングドレス着てドラッグを参加者に投与するなんて、どんな世界でも聞かないなあ。いやー、もう、大したモンだ。勝手にやってくれ。

俺は本当に帰ろうと思った。帰り道を歩いていると、靴屋があった。で、店頭にスニーカーが並んでいた。安かった。気に入ったのがあった。だからそれ買って帰ろうと思っていた。そして店内に入ると、「AさんBさん結婚おめでとう!!!」と書いた垂れ幕が下がっていて、本当に、心底嫌な気分になった。

さらに嫌な気分になったのは、おっちゃんに貰った大事な自転車を会場の控え室前に忘れてきたと言うことであって、俺は、結局、暗黒のプレウェディングに戻るハメになった。

控え室まで戻ると、おお、まだやっとるわ。ライブ。控え室の中には、俺に対して「無理に笑わなくていいから」と言った友達が横になって寝ている。その友達が俺を見ると、「なんだ、お前か。寝ようぜ。布団あるから」と言ってきてしつこい。俺はいいよ、もう帰るよ、ここにいても何のメリットもないよ、と言うのだけど、いいから寝ていけとしつこい。しょうがないので寝ることとなった。

起きると、外は完全に真っ暗で、あのバカバカしいライブも終了し、皆がゾンビのような顔をして一列に列をなし、駅に向かって歩いていた。クスリ、駄目、ゼッタイ。結局、最後まで居てしまったなあ・・・。

もうホント、いい加減帰るよ。と思って自転車に飛び乗ると、神主みたいな人が、「ご祈祷は済まされたのですか!?」と半ば怒ったような、責め立てるような口調で俺に迫ってくる。いや・・・っていうか、祈祷って何?と言うと、神主みたいな人が指さす先にライトアップされた鳥居があって、そこに、ゾンビ顔じゃない、ややまともな人間の集団が集まっている。なんだろう?あれ?

行ってみると、鳥居の先に小さい神棚みたいなものがあって、みんなそれに向かって手を合わせたのち、また別の神主みたいな人から何かを受け取っている。私もそれを渡され、容積のわりに妙に重さを感ずるそれをよくよく観察すると。青銅の鐘だった。古墳から出てくるみたいな奴。

で、さらによくよく青銅の鐘を観察して、俺はすごく気味が悪くなった。何か文字が書いている。なんだ、これ。よくよく見ると、実家の家族の名前が全員記されている。なぜ、こいつらは俺の家族の名前を知っているのだ。

俺がいぶかしげに神主を睨み付けると、神主はロボットのような眼差しで俺を見つめ返す。

そうだ、俺には妹が居て、一緒に居候していた親戚の家から逃げ出してきたんだった。俺は戻らないと行けない。そう思って、おっちゃんから貰った自転車にまたがって。青銅の鐘はそこいらに投げつけて捨てた。

空は星が一つも無い。真っ暗。出店のハロゲン灯だけが、ゾンビの列をライトアップしている。俺はゾンビの列の横を駆け抜け、誰かが待つ家に向かって走り始めた。おっちゃんと一緒に直した自転車は今のところ、上手く動いている。俺の人生だけ、上手く動かない。