脱走兵がいろいろやる夢

0213-1

0213-1
軍隊から脱走する夢を見たよ。

私は夢の中で兵隊だった。兵卒だ。一番下っ端。
そこはたぶん日本じゃない。日本とよく似た北半球の島国。そのさらに北には大国が位置していて、もうすぐ戦争が始まろうとしている。戦闘機が編隊を組んで日々訓練をしている。俺は毎日毎日小銃を抱えて走った。だけど、あるときロッカールームに居るとき。もうちょっと自由が欲しいな。と思って脱走した。「マンデルブロー魚がね・・・」などと誰かが喋っていた。マンデルブロ魚ってなんだ。

夜、逃げ出した。宿舎の灯りが唯一残された平和みたいな。皆がぴりぴりしてる。毎日毎日迎撃機がスクランブル発進する。闇に乗じて貨物船に乗り込み本州に渡った。海岸は水陸両用の戦闘車両が泥を巻き上げるためにぐっちゃぐちゃ。オイルも浮いてる。環境汚染も甚だしい。

久しぶりの娑婆の空気である。俺はもっと人間らしい暮らしがしたかった。人間らしい暮らしって何だろう・・・。それすらよく分からんって感じ。とりあえず車を盗み、服を盗み、一般人のふりをした。幸い金はいくらか残って居る。そうだな。寿司が食いたいな。と思った。パック寿司とカップ麺。なんかそういう一人暮らし時代にたまにちょっとゴージャスな食い物を食った、みたいな。そういうもんを買って食いたいな。そう思って向かったのはスーパー。バナナを買い、寿司を買った。歯ブラシと歯磨き粉も。

スーパーを出るとき、よく本屋とかに設置されてるような、防犯用のブザーが鳴った。正式名称を何と言うのか分からないが、アンテナが設置されてあって、商品に貼り付けているタグに反応して警報を鳴らす奴。あれがけたたましくなる。しかし俺はやましいことはしてないし、無視して去った。めんどくせえ。まあ、やましいことしてても止まらないけどね。

したら、飛んで走ってくるバイトの姉ちゃん、たぶん、齢20くらい、大学生のバイトって感じ。俺は強気だった。「なんすかあ?なんか用かよ」「あの・・・防犯ブザーが鳴ってるので・・・」「ああ、防犯ブザーね。あれ俺の所為なの?」「あの・・・その・・・とりあえず来て下さい」「別に良いけど、俺も急いでるしね。持ち物も見せるけど何も無いよ」と、そんで、スーパーのバックヤードにつれられる俺。二十歳そこそこの大学生のバイトの姉ちゃん、いや、20歳なんて姉ちゃんですらねえよ。20歳なんてまだまだクソガキだ。成人30歳からでいいよ。などと何ら建設的でない思考を張り巡らせつつ。

自信満々で持ち物を広げる俺、当然何も出ない。「これは会計通ってないですよね?」「それは別の店で買ったんだよ。レシートもあるだろ。よく見てくれ」「はああ・・・」とどんどん顔が暗くなるバイト女、アホか、それ見たことか。「な、だから何も出ないって」「でも、警報なったのに。おかしいよ・・・」「いや、おかしくは無いっしょ。あんなもん、よく誤作動するじゃないっすか。今回も明らかに誤作動でしょ」「でも・・・でも・・・」「でもじゃないっつうの。っていうか、あなた何なんすか?まず客は万引きありき、みたいな態度が気にくわないんすけど。まず何も出なかったんだから、謝るのが先じゃねえのかな」などとまくし立てると今にも涙がこぼれそう。アホ。アホアホ。弱い物にはめっぽう強いのが俺だ。したら。

「なにやってるんですか!!!」

0213-2

振り向くと別の女、齢30歳くらい。どんなに化粧しても、髪のつやの肌のきめ細かさはごまかせない。
「女の子泣かせてなにしてんですか!!!!」

俺は冷静に反論、「いやな、コイツが俺を万引き犯扱いするわけだよ。でもこうやって引き留められて、貴重な時間を割いてあげて、それでも証拠が見つからなかった。俺が無実だって証明できたわけだ。なら謝罪があるのが筋なんじゃねえの?ましてやお前ら客商売だろ?客を犯罪者扱いして良いわけ?っつうか、俺だって事を荒立てる気は無いよ。『あー、メンゴメンゴ』『もう~今度から気を付けてよね!』程度の謝罪で言い訳よ。でもさ、それすらないからそりゃ道徳的にどうなん?って話をしてるわけじゃん。で、あんた何なの?上司?」等と言うと。仏頂面で仁王立ちしてる30歳、曰く、

「だからって女の子泣かせていいんですか!!!!」

コイツあれだ・・・。もうこれまでの過程を一切無視して泣かせたという事実だけに食いついてくるタイプだ・・・。俺が何言おうと絶対こう返そうと決めてた感じだ・・・。経験上、こういう人はこうなったら何も聞かない感情的なタイプであることが多いので、こういう時は三十六計逃げるに如かず、ってかんじで、「あー、ハイハイ、メンゴメンゴ」か何か言って立ち去った。気分はもはや最悪だ。これは誰が悪いのか?もしかして俺が悪いのか?いや、スーパーに防犯ブザー設置してるのがそもそもおかしいと思う。

最悪な気分のところ、携帯電話に着信。旧友からだった。久しく連絡を取っていなかった。聞くと、キャブキチョーでホストクラブを経営してんだよね、などと景気の良いことを言う。withpopは何やってんの?と問われ、一寸考えた後、「北端から逃げてきた脱走兵やってんだよね」などとちょっと可愛い感じで言ってみた。あはは、お前もついに脱走兵かー、じゃあいいよ。兵役逃れなら匿ったことあるから。歌舞伎町来いよ、カブキチョー、などと調子の良いことを言う。あはーん、歌舞伎町っすか。俺人混み嫌いなんだけどな・・・などと思いつつ、盗難車にのってブラブラしてるよりはよっぽど安全。木の葉を隠すなら森に隠せ、との言葉もあるとおり、旧友に甘えることとした。

で、JR新宿駅の東口を出たら、そこは私の庭、でもない。人でごった返してるだけのクソ空気の汚いクソゾーン。ハブ駅じゃなきゃ絶対新宿になんかいかねえ。

紙切れに書いた地図を読み読み、案内所とラブホの隙間を抜けた先にそれはあった。入り口がきたねえ。というか、これ本当にホストクラブか?めちゃくちゃガラの悪い兄ちゃんがたむろしまくってるんですけど。ムキムキの黒人が俺に一瞥をくれ、そのあとに流ちょうな日本語で、「XXXXサンのご友人ですね?どうぞ、どうぞ」などと案内する。地下へ向かう間にも、鼻血を流してスーツを汚す若い兄ちゃんなどがうつむき加減で階段に座っていて、ますます俺の疑念は強くなった。

が、入ってみると全然そんなこたあ無い。普通のホストクラブ。いや、普通つっても、俺、ホストクラブ入ったこと無いから普通がどうか分からんけど。たぶんキャバクラと一緒だろ?そんな感じ。普通のキャバクラで男女逆のパターン、みたいな。めちゃくちゃデカイソファーに座らされ、葉巻とロックアイスとグラスが用意される。葉巻なんて吸ったこと無いよ・・・。なんとなく吸ってるふり。

でも酒は好きだよ。出てきた酒は安酒じゃない、ちゃんとした酒だった。山崎12年、みたいな。ジョニーウォーカー、とか、そういうのじゃなかった。まあ良いんじゃないっすか?飲み放題っすか?みたいな。おほほ。ちょっとテンションあがってきた。男に酒作ってもらうのはなんか妙な気分だ。

すると、旧友が登場。高そうなスーツを着てやがる。俺は脱走兵スタイル。しわしわのシャツ。しかし、旧友はいっぺんの蔑みの表情もなく、さわやかな笑顔。「よく来たな。まあゆっくりしてけよ。今日はイベントやってっからさ」「イベント?」「ほら、アレだよ」などと指さす方向を見ると。

0213-3

「やだー!放してー!帰るー!誰かー!誰かぁぁぁあぁぁぁあ」などと暴れながら入ってくる女二人、それを押さえつける若い衆。なんだこれ・・・。これ絶対やばいやつだ・・・。犯罪だ・・・。なんだかえらいところに来てしまった・・・。と、思った。

俺は人一倍変態で性欲が強いと自負していますが、しかし血を見たくは無いぞ・・・。演技は良いけどマジもんは嫌だぞ・・・。AVってAV「女優」だろ?つまりアレは演技だろ?いやーん、にゃーん、とか言ってる演技であってだな。演技だと分かって見ることにエンターテインメント性があるわけじゃん。これって、あれ、犯罪じゃん・・・。あっ、あれ、いや、止めて下さい・・・。別にイベント見なくて良いス。具合悪いっす。

その後もなんだかさんざんで、旧友はさわやかな笑顔とは裏腹にとんでもねえゲス野郎と化していた。俺はひたすら酒を飲んでごまかした。

やっと隠れ家とやらに連れて行かれたのが夜が明けてから。しかし何故か、カーテンを開けるな、窓を開けるなとしつこく念を押される。入ると同じようにだらしない人間が酒を飲み、女を抱き、性懲りもなくどろどろと。うわあ・・・。不健康だあ・・・。

しかし中には知った顔も居て、おおー、お前か、お前か、みたいな感じでしばし談笑。その一人からまた葉巻と、何かの錠剤を渡される。「これ、すっごいんだよ。このクスリ。一回やってみろよ」「何の薬だよ・・・」「あっ、バカ、乱暴に扱うなよ。落としたら爆発するからな」「爆発物飲んで大丈夫なのかよ」「大丈夫、あのコンセントに刺さってる機械あるだろ?あれがあれば爆発しねーから」と、コードを目で追っていくと背の高い加湿器みたいな謎の機械。あやしい・・・・。

錠剤は緑色に怪しく輝いていた。こんなもん飲めるか。と思った。が、悪ノリの激しい友達、「良いから飲んでみろよー」などと良い、無理矢理口に押し込もうとする、うわ、止めろ、と抵抗すると、口からこぼれた錠剤が爆竹のように爆発。「なんだよ、爆発してんじゃん!」「あれー、っかしいなぁー」などと笑って見せて。アホ。アホ。アホ。死んだらどうする。アホはさておき、俺は少しでもマシな生活を構築せねばならぬ。と心に決めた。

腹が減った。メシが食いたい。と、無駄に広い台所を漁ると、新品の電気式炊飯器が出てきた。「それ要らないからやるよ。米は無いけどな」と言われ、ラッキー、と俺はほくそ笑んだ。しかし米が無いんじゃ使うことも出来ない。米買ってこよう。米買って、レトルトの牛丼買って、それかけて米食おう。と、考えると俄然世界が明るくなった。人間的な暮らしだ。クスリと女におぼれるよりも、進んで灯りを付けましょう。俺は立ち上がった。したら。コンセントが抜けて加湿器みたいな謎の機械が倒れた。

「あ。コンセント抜けちゃった。・・・これ抜けたらやばい?」と友達に聞くと、もう、友達ラリってる。女のおっぱいをもみし抱きつつ、「ああ、やばいやばい。爆発するわ」とニヤニヤ笑っている。俺は嫌な予感がした。そして、炊飯器を抱えて逃げ出した。

0213-4

マンションの階段を駆け下り、米を買うはずだったスーパーを通りすぎた辺りでひときわ大きな爆発音が轟いた。しかし俺は振り返らなかった。ただただ炊飯器を抱えて走った。メロスは友達を助けるために走ったんだけど、俺は友達を見捨てて走った。おっぱいもろとも爆発四散してるだろう。あそこまで派手にやれば新聞にも載るだろう。あのホストクラブも家宅捜索されるだろう。そのうち、あの、ホスト経営の友達がそのうち俺を殺しに来るだろう。俺は脱走兵であると同時にやばいところに足を踏み入れてしまった。これからは落ちていくだけだ。でもそんなもん、知ったことか。俺は生きる、生きて生きて生き延びてやる、と誓った。

その俺の心を反映するがごとく、高層ビル群から放り投げられる株券の束。株券の紙吹雪。もはや便所紙いかの価値しか無くなった証券。ついに戦争が始まった。その紙吹雪を駆け抜けた俺。

そんで思った。軍隊が結局一番マシだった。小銃を抱えて走り回ってればそれで給料がもらえたし、宿舎で違法な薬物を摂取して乳に顔を埋める変態も居なかった。娑婆の空気が、などと嘯いてみても現実はどうだ。スーパーに行けば万引き犯扱い。結局俺が得たものは炊飯器一つ。

北端に帰ろう。国のために戦おう。と、初めて建設的な考えと相なった。

また貨物船に飛び乗ろうとした・・・が、貨物船はすでに徴用され、最新鋭の装備に身を包んだ機械化歩兵師団を乗せ出港するところ。ああ、待って、と言うのもむなしい、飛び乗る間もなく出港してしまった。いや、俺は戻る、絶対戻るぞおおおお!とクソ重い、これも最新型圧釜水蒸気圧着職人手作業加工乱れ雪月花、みたいな、高級炊飯器をうち捨てて、泥だらけの海に飛び込んで泳ぎ始めた。
おお、俺は、俺は生きている。

脱走兵の俺を、軍隊はあっさり受け入れてくれた。この非常時だから、脱走兵と言えども一応は訓練を積んだ兵士が一人でも多く必要だったのかも知れない。でも辛かったのは、後輩がすでに下士官になっていたこと。俺は脱走兵の三等兵、いや、四等兵。

「あっ、先輩ー。すんませんね、もう階級が違うんで」か、何か言われ、冷遇される。食うメシも一々違う。悲しいことこの上無い。でも脱走したほうが悪い。後輩は真面目に兵隊やってたのだからしょうがない。このころ、敵国の爆撃が激しくなってきて、警報が鳴っては宿舎の外に逃げ出すことが多くなっていて寝不足だった。

「マンデルブロー魚・・・」

となぜか口からこぼれでた。マンデルブロー魚。俺が脱走する間際に聞いた言葉。「なんですって?」と女の声、振り向くと漫画に出てくるような背の小さいハカセと白衣を着た女。「それよ!マンデルブローだわ!」と女、何を言っているのか意味不明。

「敵の爆撃隊はマンデルブロー理論に基づいて都市を包囲するかのごとく、爆撃を続けているのだわ。だとしたら私たちはそれを待ち伏せすればいい。レーダーが使えなくても、これで航空兵力の集中運用が可能になる」か何か言ってる。「あなた、よくそれに気がついたわね」などとなんだか勘違いしてるご様子、「ええ、まあ、一応工学部出身なので」などと、俺も俺で適当なことをのたまう。

0213-5

聞くと、そのハカセの娘がこの女、若くして出世した軍属の情報戦略担当官、らしい。その女に連れられて作戦室に入り、航空機の運用についての講釈を聞かせられる。俺、陸軍普通科なんだけどな・・・。

でも、この女は相当優秀みたいなので、うまく気に入られれば良い感じに出世しないかな?などという考えも出てきたりして、心中複雑な考えになる。でも何処かでボロが出るよなあ・・・。でもチャンスだよなあ・・・。戻っても後輩の下士官のもと突撃するだけだし。あいつアホで無茶苦茶だから俺すぐ死んじゃいそう・・・。などと、考えてるうちに起床。

この日はちょっと熱があった。こういうときはいっぱい夢を見る。この夜はほかにも色々な夢を見たが、後でまた書く。

ちなみに、「マンデルブロー魚」とは、「マンデルブロ集合」から来てると思われる。
マンデルブロ集合とは、漸化式

\begin{cases}z_{n+1} = z_n^2 + c \\z_0 = 0\end{cases}

において、n→∞の極限をとっても発散しないような複素数cの集合です。感覚的に説明すると、Z_n^2の項があるので、複素平面上でくるくる回転するような複素数列が得られるわけです。くるくる回っても外側に発散していかないようなcの集合ということね。超簡単に端折って言うと。で、これを図に表すと

800px-Mandelset_hires
(wikipediaより)

こんな感じになる。これがマンデルブロ集合。

だから何?って言われても知りません。マンデルブロー魚って聞こえたんです。